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イスラエルとイラン、次の展開は?

週末のイランのイスラエルに対する直接行動は、さらなる拡大が懸念されています。しかし、中東地域で本格的な危機が発生(これは弊社のベースケース・シナリオではありません)しない限り、金融市場への影響は限定的と考えます。

要点

  • イランによるイスラエルへの攻撃は紛争拡大の懸念を高めていますが、中東地域での広範な戦争は、弊社のベースケース・シナリオではありません。
  • イスラエルからの反応があっても、少なくとも慎重なものになるであろう「心強い」兆候が確認されます。また、イスラエルの最も重要な同盟国である米国は、報復に参加しない意向を表明しています。
  • 商品市場は、緊張が最も直接的に伝わる可能性があります。弊社は、今後数週間のうちに石油とそのデリバティブの価格がさらに跳ね上がると予想します。
  • この紛争は株式市場へのエントリーポイントを生み出す一方で、米国債も地政学的な緊張の際にセーフヘイブン(安全な逃避先)の特性から恩恵を受ける可能性があります。

イランによるイスラエルの攻撃は、半年前には考えられなかったことです。しかし、週末のこの攻撃は、中東における古くからの戦線を硬化させた、ここ数カ月に及ぶ流血の結果として起こりました。懸念されるのは、イランの行動がこの地域の危険な対立をさらにエスカレートさせ、本格的な危機につながるのではないかという点です。しかし、報復があっても少なくとも慎重なものになるであろう「心強い」次のようないくつかの兆候があり、双方とも戦争の瀬戸際から一歩引き下がると弊社は予想します。

  • イランの国連代表部は、攻撃後に「この問題は終結したとみなすことができる」と発表しました。これは、イラン政府が今後数カ月で事態の沈静化を図る可能性を示しています。
  • 少なくとも第1報によれば、米国とイスラエルの国益への損害と人的被害はいずれも非常に限定的であり、潜在的な緊張緩和への道筋が見出しうることを示唆しています。
  • イスラエルとその同盟国は、飛来したドローンとミサイルの大部分を迎撃できた模様ですが、これはイラン政府の新たな攻撃を抑止するはずです。イスラエルが波状攻撃を食い止められたことは、重要な教訓となるでしょう。
  • イスラエルとイランは約1,000 km離れており、同盟国や近隣諸国の支援なしにはイスラエルによる空爆は困難です。また、イランはより威力の高い弾道ミサイルの使用を避けたようです。
このような状況を考慮すると、世界情勢と金融市場にとって、潜在的に重要ではあるものの限定的な次のような影響があると、弊社は考えます。
地政学:世界的に波紋を及ぼすものの広範な戦争には至らない

イランの攻撃は、選挙を控えたバイデン大統領の状況をさらに複雑にするでしょう。米国のイスラム系有権者からの支持を集めるため、バイデン氏はイスラエルのネタニヤフ首相にガザへの食料支援ルートを開放するように圧力をかけました。しかし、イランからの攻撃により、バイデン氏は米国のイスラエルに対するコミットメントの再確認を迫られるでしょう。

世界の注目がウクライナから中東に移り、西側諸国の軍事支援が拡大することで、ロシアは恩恵を受ける可能性があります。また、石油価格の上昇は、ロシア国家予算の安定化に寄与するでしょう。

中国は近年、中東地域で積極的な動きを強めています。当地域における事態の動きの速さを踏まえれば、中国政府は自らの立場に関して再確認を進めたいところでしょう。しかし、同国自体が経済問題と戦っており、安価な石油と開かれた通商ルートを必要としているため、事態が制御不能に陥らないようにする必要もあります。

商品:混乱に対しヘッジとなる石油、恩恵を受ける金

中東で緊張が高まる中、ブレント原油はすでに1バレルあたり90米ドルを超え上昇しています。弊社は、今後数週間のうちに石油とそのデリバティブの価格がさらに跳ね上がると予想します。これは、商品複合体への弊社のロングポジションとうまくフィットします。石油は、中国の景気回復と堅調な米国経済の恩恵を受ける一方、新たなインフレリスクへの優れたヘッジになると弊社は考えます。したがって、弊社の石油に対する基本スタンスは引き続き前向きです。

金は、同じく地政学的緊張を引き金に最近力強く上昇した後、新興市場の投資家から買いが入っており、分散投資手段および安全な逃避先としての地位からのメリットを引き続き享受するでしょう。実質金利が低下傾向にある中、総合インフレ率の外因的な上昇が、安全資産である米国債への逃避と相まって、金相場を下支えする可能性があります。

唯一のリスク要因は、米ドルがこの危機にどのように反応するかです。安全な逃避先として、米ドルは有事に買われる傾向がありますが、それは商品にとってマイナスに働きます。

インフレ:物価圧力を引き続きコントロールする必要性

石油価格の上昇がコアインフレに影響を与える中、紛争の拡大はインフレ抑制に向けた各国中央銀行の取り組みを一層複雑化する可能性があります。しかし、中東地域の危機が本格的に拡大しない限り、その影響は引き続き抑制されたものになると弊社は考えます。

米国では過剰需要が重要な問題ですが、国内石油生産量が大きいため、今回のような外部ショックに対して比較的高い耐性があります。対照的に、特にロシアによるウクライナのエネルギー関連施設への攻撃を受けてガス価格が最近徐々に上昇しており、経済が再加速し始めたばかりの欧州では、物価上昇の影響がより広範囲に感じられるかもしれません。

全体的に見て、最近の米国債利回りの上昇を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)は、不確実性が高まった場合には「本来の」慎重な姿勢に戻り、年後半における利下げペースを維持する可能性があります。

金融市場:潜在的なエントリーポイント出現の可能性

株式市場は、予想を上回る経済指標と堅調な企業収益により、基本的に堅調に推移しています。そのため、中期的に見て弊社は株価指数に引き続き前向きです。また、短期的な調整は良いエントリーポイント(または再エントリーポイント)になりうると考えます。

しかし、米国の予想外に高いインフレ率が「より高く、より長い」金利見通しにつながり、先週の米国債利回りが4.5%超の水準で取引を終了するなど、短期的なモメンタムが4月に入って(イランの攻撃前には)すでに鈍化していたことも、弊社は十分に認識しています。

このような環境下、石油価格の上昇は、インフレの粘着性が長期化し、中央銀行による利下げの可能性が後退するとの懸念を、主に心理面から悪化させかねません。

株式のポジショニングとセンチメントは、ここ数カ月でますます前向きなものになっていますが、バブルの領域には踏み込んでいません。先週末の事件の予期せぬ影響が、市場の活況を抑制する方向に働く可能性があります。中東紛争がこのような展開となる以前から、弊社は債券市場および株式市場ともにボラティリティが高まると予想しており、3月には特定の種類のポートフォリオにおいて、オプション戦略によるヘッジを積み増し、金のポジションを維持しました。

石油価格の上昇は外因的ショックであり、FRBにとっては、エネルギー価格を通じた輸入インフレの上昇と、経済成長の鈍化および市場ボラティリティの上昇との間で、困難なトレードオフになることでしょう。

米国債は、引き続き強いインフレ統計の数値から主に影響を受けるのは確かです。しかし、地政学的な緊張の際には、安全な逃避先としての特性から恩恵を受ける可能性も高いでしょう。現在の利回り水準では、債券ポートフォリオの再構築が必要な長期投資家からの関心が再び高まる可能性があると弊社は考えます。

攻撃後の最初の市場取引では、イスラエルへの被害がなかったことや、サウジアラビアによる自制の呼びかけが安心材料となり、S&P 500先物は0.4%上昇、ユーロ・ストックス50指数は0.47%上昇しました。また、為替は1ユーロ1.0659米ドルでほぼ変わらず、ブレント原油は+0.5%と若干上昇しました。

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