Embracing Disruption
アナンド・グプタへのインタビュー
インド株について、アナンド・グプタが解説します。
Q:アリアンツGIに入社するまでの経歴とキャリアについて少し教えてください。
私はインドで生まれ育ち、パンジャブ大学で商学を学んだ後、勅許会計士の資格を取るための勉強をし、その後CFA資格も取得しました。父が銀行員だったので、幼い頃からファイナンスと商業に親しんでいました。私はずっと、企業のビジネスモデルに強い関心を抱いてきました。これは、初期の私の考え方に影響を与えただけでなく、私のキャリア全体において大きな役割を果たしています。今はインドには住んでおらず、シンガポールを「故郷」と呼んでいますが、インドとのつながりは今でも非常に強く、少なくとも2カ月に1回はインドに戻っています。
キャリアに関しては、この14年間はシンガポールを拠点としてインド株を専門に扱っています。その前の7年間は、ムンバイを拠点とするインド最大の投資信託会社で働いていました。それ以前は、インドの大手グローバル銀行でセルサイドの最初の経験を積みました。
Q:アリアンツGIに引きつけられた理由と、入社して2カ月経った今の感想を教えてください。
私がアリアンツGIに引きつけられた理由は二つあります。第1に、アリアンツGIがこのアセットクラスに力を入れていること、特にインドでトップクラスの株式事業を構築するべく取り組んでいることに魅力を感じました。これは入社前から思っていたことですが、実際に数カ月働いてみて、その思いはいっそう強くなりました。インド株は、私が情熱をもって取り組んでいるものです。したがって、成長しつつあるインドに対するアリアンツGIの熱心な取り組みの一端を担うことにやりがいを感じており、私たちのチームがこの簡単にはくくれない複雑な市場について理解を深め、差別化された見方ができるようにサポートしたいと考えています。
2つ目の理由は、投資とお客様に対するアプローチの誠実性です。私は、資本の保護と成長の両立を目指すボトムアップ型のアクティブな投資方針を信奉しているため、アリアンツGIの企業文化と非常に相性が良いと思います。また、ESGに関してであれ、クライアントサービス、あるいはその他のフィデューシャリー(受託者)としての側面に関してであれ、私にとっては顧客価値の維持が第一であり、その点も顧客エンゲージメントの水準が高いアリアンツGIとよくマッチしていると感じています。
Q:最近、インドに対する投資家の見方が変わり始め、同国の株式市場の人気が高まっています。何がこのような変化をもたらしたとお考えですか。
転換点に差しかかっていることは確かであり、インドは今や無視できないほど大きな存在です。すでに世界第5位の経済大国であり、4年ほどのうちに世界第3位に浮上するでしょう。言うまでもなく、投資家はそのような大きなポテンシャルを秘めた市場を無視することはできません。その上、近年のインドの成長と発展は目を見張るものがあり、生産性の飛躍的な向上とテクノロジーの導入が進んでいます。たとえば、この7年でインターネット利用者は5億人増え、それと同時にデータのコストは9割以上低下しました。その結果、インドの起業家には新たなビジネスモデルの世界が開けています。
さらに私たちは、インドの強固で安定した政治体制と、国際舞台での有利な貿易上の地位が続くと見ています。つまり、地政学的な緊張が続く中、インドはビジネスを行う中立的な場所としての地位の強化を目指せる立場にあるということです。
Q:それでは、インド経済の長期的な見通しと、今後注目を浴びそうな具体的なセクターについて見ていきましょう。この点に関して、少し詳しく解説していただけますか。
いくつかの理由から、未来は明るいと考えています。まず、インドは人口動態が非常に有利です。人口の年齢の中央値を見ると、インドは若い国です。これは、特定の製品やサービスを提供するセクターの追い風となると同時に、新しいセクターの台頭を促しています。また、オールドエコノミーのセクターの多くは、急速なテクノロジーの導入とデジタル化により、生産性が大きく向上しています。
政府の改革もこの絶好の機会を後押ししており、その結果得られる経済的なメリットはしばらく続くはずです。
セクターに関しては、インドに投資したり投資を検討したりする際に、現時点で完全に排除したいセクターは一つもありません。インド経済は現在、このような状況であるため、潤沢な投資機会があります。とはいえ、たとえば石炭のように、構造的な課題に直面している「斜陽産業」もあり、将来成功するビジネスモデルの検討においては、そのような産業を避けるようにしています。必然的に、私たちのリサーチ活動のかなりの部分は、コーポレートガバナンスの脆弱さに関連する落とし穴を回避することに向けられています。こうした落とし穴は、どのセクターでも生じる可能性があるため、常に注意しておく必要があります。
Q:インド市場にあまりなじみがない投資家もいると思われます。そのような投資家には、どのような情報を伝えておきたいですか。
強調すべき点は、インドは新興市場の中で最も多様性に富んでいるということです。デフェンシブ銘柄とシクリカル銘柄、輸出企業と輸入企業の差、あるいは公表されている指数内のセクターの比重のバランスを見ると、インドはブラジルや韓国、台湾などの新興市場と比較して、多様性という点で格段に優れています。
さらに、インドの株式市場は非常に流動性が高く、この点に関して多くの欧州市場を上回っています。また、小口預金者の間で現金預金を株式市場に移す動きが強まっていることは、より強固で安定した投資家基盤の構築に寄与しており、株式市場への資金流入のけん引役としての外国人投資家の存在感は大幅に縮小しています。
最後に、先ほど触れたように、インドは国内の政治情勢が安定しています。実際、政治体制は強固な民主主義体制であり、他の新興市場だけでなく先進国市場にもひけをとりません。与党インド人民党(BJP)は現在、下院議会を全面的に支配しており、上院でも大きな影響力を及ぼしているため、法改正を効率的に成立させることが可能です。この安定ぶりを物語る一つの例が政治的腐敗の劇的な減少であり、一部の評価では近年95%近く減少しています。
Q:政治情勢の話を続けると、インドは4月と5月に総選挙を控えています。重要な争点は何でしょうか。
政変が起こる可能性は極めて低いと思われます。アナリストは、与党が再選を果たす確率を90%程度と見ていますが、私個人はもっと高いと見ています。さらに、2023年12月初旬に行われた州議会選挙では、与党が過半数を獲得したことも、私の見方を強めています。