Embracing Disruption
ペットヒューマニゼーション:アジアのペット経済を形作るトレンド
「ペットヒューマニゼーション」は、ペット向けフードやヘルスケア、サービスのプレミアム化に対する需要をかき立てており、特にアジアのペット市場は驚異的な成長を見せています。
要点
- ペットを人のように扱う「ペットヒューマニゼーション」は、ペット向けフード、ケア用品、サービス、ヘルスケアのプレミアム化に対するニーズを生み出しています。
- アジアにおけるプレミアム化ブランドは、景気に左右されにくい成長見通しに乗じる興味深い機会を生み出しています。
- 今後数年間、プレミアムなヘルスケアやサプリメントといった新たな市場の成長と統合が予想されます。
ペット飼育の進化
この10年、社会全体における孤独感の上昇と出生率の低下を受け、ペット需要が急激に高まっています。人間の伴侶としてのペットは、年齢層を問わず、帰属意識や仲間との交流を求める 気持ちを満たしてくれる存在です。ミレニアル世代(米国、英国、中国などの主要ペットケア市場では、ペットの飼い主のかなりの割合、場合によっては最大の割合を占めている1)にとって、ペットは子育ての練習、あるいは子育てに代わるものとなり、それより上の世代は、子どもが成長した後の空の巣症候群に対処するためにペットに慰めを見出しています2。
ペット飼育は、もともとは欧米諸国の方が一般的でしたが、アジア諸国でも、特に新型コロナのパンデミックの開始以来、急速に広がっています。
アジアではこの10年でペット飼育が爆発的に増え、自宅でペットを飼っている人の割合は60%、犬や猫を親友と公言する割合は32%に上ります3。
ペットヒューマニゼーションの傾向を受けて…
ペットを家族や子どものように扱い、人間の食生活やライフスタイルのトレンドをペットにも当てはめる「ペットヒューマニゼーション」の傾向がアジア太平洋地域で高まっています。この傾向が特に強いのが中国で、半数以上(55%)が飼っている犬や猫を子どもとみなし、3分の1(28%)が家族の一員、7.5%が友人とみなしています4。
このようにペットの飼い主からペットの親へと意識が変化したことは、オーガニック食材や地元の食材を使ったフード、デザート、サプリメントといったペット向けのプレミアム商品・サービスに対する高い需要を生み出しています。韓国で2023年にペット用カートの売上がベビーカーの売上を上回った5ことが示しているように、人間のようなペット用品・サービスに対する需要は、欧米よりもアジアの方が急速に伸びています。
高齢化と好景気、そして出生率の低下が重なっている日本の例にならうと、プレミアム商品に対する需要はまだ拡大の余地があり、ペットのウェルネスや保険、さらにはペット葬儀などの分野も発展の可能性があります。
…進むペット商品のプレミアム化
アジアのペット市場の成長率も、欧米のペット市場の成長率を上回っています。たとえば、米国ではプレミアム商品の需要が2023年に27%増大しました5。これに対し、中国では38%増となる見込みです6。
調査データによると、中国の2021年のペットフード生産量は113万トンで、2020年に比べ17%増という驚異的な伸びを記録しました7。
プレミアムブランドが「オーガニック」や「地元産」といった人間同様の食品表示を採用する中、ペット向けのデザートやプロテインサプリメントなどの商品の人気がさまざまな市場で高まっています。
こうした需要の一部は、ペットインフルエンサーという興味深い現象から生まれています。彼らは、人気のソーシャルメディアプラットフォーム上で100万人のファン層と数十万人のフォロワーを持ち、ブランドと数多くの提携を結んでいます8。
ミレニアル世代とZ世代がペットヘルスケア市場のポテンシャルを後押し
アジアのペットヘルスケア市場は2ケタ成長が見込まれており、2027年までに10%拡大して1,320億米ドルを超える規模に到達すると予想されます。
アジア太平洋のペットケア市場、2021年と2027年(単位:百万米ドル)
出所: Graphicalresearch.com. Asia-Pacific pet care market. As of January 2021
この成長ポテンシャルを後押ししている主な要因として、以下が挙げられます。
- 中国では、ミレニアル世代とZ世代がペットの飼い主の50%を占めていること7。この世代は、高学歴で可処分所得が多い傾向にあり、ペットのために毎月50~100米ドルを費やしています8。さらに、1990年より後に生まれたこの世代の6割以上が将来ペットを飼うことを希望している一方、すでに飼っているのは1割足らずです。こうした成長データは、中国のペット飼育数の増加と一致しており、2019年の1億匹未満から2024年には1億7,000~2億匹に達すると推定されています9。
- インドで、中産階級の成長がペット市場の成長をけん引していること。インドの犬の飼育数は2018年の1,940万匹から2023年には3,100万匹に増加しました。市場規模は2021年時点で8億9,000万米ドルに成長し、今後10年で3倍近くになると予想されています10。
- 栄養補助食品市場などのニッチなセグメント。この市場は2017年から2023年の間に6.4%成長したと推定されています11。市場シェアが最も大きいのは中国(30%)ですが、最も速く拡大するのはベトナムとみられ、2029年までの予測成長率は16.7%となっています12。
投資にとっての意味合い
ペットと飼い主との絆が深まっていることを受け、ペット市場が今後も繁栄を続けることは間違いないと思われます。市場がさまざまな分野に拡大していくにつれ、プレアミアムなペット商品に魅力的な投資機会が生じます。
ペットが家族の一員とみなされるようになる中、飼い主は最高品質の商品を追求し続け、ペットのウェルビーイングに関してほとんど妥協しないと考えられるため、この業界は景気低迷期においても、かなり底堅いものになると予想されます。
1 HealthforAnimals: Global State of Pet Care, July 2022
2 Pet ownership, loneliness, and social isolation: a systematic review | Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology (springer.com). As of July 2022
3 UBS: China 360: Tracking the themes that matter. As of February 2023
4 Petfood packaging.com: China pet statistics report. As of 2020
5 Koreatimes: Sales of pet strollers surpass baby strollers for 1st time. As of February 2024
6 China-Briefing.com: Investing in China’s Multi-Billion-Dollar Pet Industry. As of 2023
7 PwC: Finding opportunities in China’s fast growing pet industry, September 2020
8 Jefferies Thematic Research Gen Z: Global Purchasing Power and Influence, August 2022
9 PwC: Finding opportunities in China’s fast growing pet industry, September 2020
10 The Economist.com: Indians are going gooey over dogs. As of December 2023
11 Mordorintelligence.com: Asia-Pacific Pet Nutraceuticals Market Size & Share Analysis - Industry Research Report - Growth Trends. As of August 2023
12 Ibid.