Embracing Disruption
見えないものを大切にする—持続可能なソリューションによる地下水過剰利用への対処
要点
- 国連は1993年から毎年3月22日を「世界水の日(World Water Day)」としており、淡水の重要性に世間の注目を集めてきました。
- 今年の世界水の日のテーマ「平和のための水」1では、水の不足や汚染あるいはこの貴重な液体へのアクセスが不平等で限定されていることが紛争を引き起こす可能性、そして水に関する協力がどのようにプラスの波及効果を生み出せるのかに特に重点を置いています。
- 地球の生命線である淡水資源を守ることは、地下水や帯水層の枯渇を防ぐことも意味します。
- 自然の貯水機能の管理と復元に重点を置いた持続可能なソリューションへの投資が、現在および将来における水関連の課題への対処にここで役立ちます。
地下水は全淡水の30%を占める2とともに、地球上の液体淡水の99%近くを占めており、世界中の飲料水のほぼ半分を供給しています3。
現在、世界中で採取される地下水の70%が、食料、繊維、家畜、工芸作物などの農畜産物に使用されており、乾燥および半乾燥地域では取水量のレベルが著しく高くなっています4。
非常に大きな帯水層は、合わせると世界の地下水埋蔵量の半分以上を占め、世界の地下水取水量の約40%を供給しています5。最近の科学分析によると、世界中で調査された合計1,693の帯水層のうち36%で、2000年から2022年にかけて水位が大幅に低下しました6。
涵養に必要な推定期間は水文地質学的特性により異なりますが、ある帯水層はわずか10年かそれ以下である一方、別の種類の帯水層では数千年を要します。
地球の水循環における必須要素である地下水と帯水層の脆弱性を踏まえると、持続可能性の高い水処理、水管理、水インフラと供給ソリューションに投資を振り向けることが欠かせません。投資は、地下水枯渇の世界的な加速に伴う諸課題への対処に寄与します。また、水とエネルギーへの需要が等しく増大する中、増え続ける人口に対する食料供給を確保する上でも、重要な役割を果たせます。
a World Resources Institute: How to Sustainably Feed 10 Billion People by 2050. December, 2108
b Ibid.
c Ibid.
d Ibid.
e Worldbank: Urban development
f Our world in data: water-use stress. July, 2018
g OECD: Environmental outlook to 2050. April, 2001
h Ibid.
i Nature.com: Reassessing the projections of the World Water Development Report. July, 2019
地下水と帯水層:逼迫する必須資源
投資はさらに不可欠となっています。なぜなら、気候変動が進行し、干ばつがより頻発してその期間が長期化する中、帯水層や地下水貯留層が過剰利用により信頼に足るバッファ機能を果たせず、農業損失の軽減に貢献できないためです。結果的に、将来の干ばつに対する農業の強靱性は低下し、世界の食料サプライチェーンと食料安全保障が危険にさらされます。
さらに、地下水の人為的汚染、つまり、家庭、工業、鉱業、農業からの大量の廃棄物、廃水、残留物による汚染は、この不可欠な資源をさらなる圧力にさらします。
米国の農作物輸出の42%(主にトウモロコシ)は、枯渇しつつある地下水で栽培されています7。地下水の枯渇が進むほど、農作物の生産・輸出が減少し、より多くの輸入国とその食料供給がリスクにさらされます。
持続可能なソリューションによる淡水資源の貯蔵とアクセスの改善
持続可能かつ総合的な形による自然の淡水貯蔵機能の維持、管理、復元は、特定のセグメントにおいて、今後数年間でほぼ2桁の成長を示す市場になると見込まれます。とりわけ、地下水位と水質をコスト効率の高い方法で監視および測定するのに役立つデジタルソリューションへの支出増加がその要因です。
世界の上下水道セクターによるデジタルソリューションへの支出は、年率8.8%で成長し、2030年に市場価値552億米ドルに達すると予測されています。これは、2021年の投資額259億米ドルの倍以上です8。
出所: Cleantech Insights: The Future of Digital Water Technologies. 2023年3月現在。
この発展しつつある市場では、水のバリューチェーン全体に沿ってイノベーター、主要なイネーブラー、受益者を特定し、そこに投資を行うことも求められます。
たとえば、洗練された上下水の処理技術、サービス、製品を持つ世界的大手メーカーは、専門的な環境水モニタリングのために、水流の速度と複雑な水流状態を測定する超音波流速計(超音波ドップラー流速プロファイラー:ADCP)を開発しました。
スウェーデンに本拠を置く熱交換器分野のトップ企業は、温室効果ガス排出量を大幅に削減し、エネルギー消費の最適化に寄与するとともに地下水温の保持を可能とする、地下水ベースの自社製冷暖房システムを提供しています。
これらの企業やその他の先進的企業が、天然水資源の持続可能性を向上させる品質と強靱性に優れた製品をさらに開発できるようにするには、現在および将来の水不足と水質の問題に対処するソリューションに向け、さらに多くの資本フローを振り向けることが極めて重要です。
1 UN World Water Day
2 How Much Water Is on Earth? – Earth How. As of September 25, 2023.
3 UN World Water Development Report 2022. As of March 2022.
4 UN World Water Development Report 2022: Agriculture. As of April 2023.
5 The Groundwater Project: Large Aquifer Systems Around the World. As of July 2022. Updated March 2023.
6 Nature.com: Rapid groundwater decline and some cases of recovery in aquifers globally. As of January 2024.
7 United Nations University; Institute for Environment and Human Security (UNU-EHS): Technical Report. Groundwater depletion. As of 2023.
8 Cleantech Insights: The Future of Digital Water Technologies. As of March 2023.