Embracing Disruption

中国経済は、辰年に再び活気を取り戻すか?

東アジアでは、2024年2月10日に春節(旧正月)を迎えます。中国株の投資家たちは、期待外れとなった卯年に別れを告げることに安堵し、伝統的に干支において最も縁起が良いとされる辰年がその評判通りの1年になるのかどうか思案しているかもしれません。とはいえ、干支に込められた知恵も、近年の傾向に基づいた諦観的な予想も、投資家の役に立つ指針とはならないでしょう。常に言えることですが、中国の株式市場の先行きを分析するにあたっては、その成功に極めて重要な要因を明確かつ冷静に見極める必要があります。たしかに、中国の構造的問題は紛れもない事実ですが、現在の景気低迷局面を新たな現状とみなすことは、3年前の根拠なき楽観論と同様、見当違いとなる可能性が高いでしょう。

では、2024年に極めて重要となる要因とは何でしょうか。

第1に、中国政府がどの程度の財政・金融刺激策を講じる用意があるのか、そしてどのように講じるのかが注目されます。李強首相がダボス会議で中国経済を免疫力の強い健康な人にたとえ、昨年の成長が「大規模な刺激策に頼ることなく」達成されたことを強調するスピーチを行ったことで、株式市場はさらなる政府支援が計画されているかどうかを疑問視するようになっています。しかし弊社は、中国政府が債務負担を大幅に拡大しないよう慎重姿勢を保ちつつも、支援せざるを得なくなるという見方を変えていません。実際に、政策当局は、中国の2024年のGDP成長目標(4.5~5%程度と予想される)を達成するために尽力することが予想され、そのためには追加の刺激策は避けられない可能性があります。

中国経済の課題への政府対応が変化する可能性を示すもう一つの兆候として、中国人民銀行は、預金準備率(銀行が貸し出しや投資に回さず手元に残しておかなければならない負債の割合)を2月5日から50ベーシスポイント(bp)引き下げると発表しました。人民銀の潘功勝総裁はまた、農業セクターと中小企業向けにさらなる支援策を講じることも確認しました。さらに、人民銀と国家金融監督管理総局が共同で、不動産開発業者の調達資金の利用範囲を拡大し、流動性を改善させる措置を発表したことも歓迎されました。これは、中国の回復ストーリーに不可欠な不動産セクターの再編を進めるためのより一貫性のある枠組みの確立を示唆しています。弊社はこの取り組みが、数年にわたる複雑なプロセスになると見ています。

第2に、市場のバリュエーションは、低く抑えられた水準にあります。MSCI中国A株オンショア指数は、長期の平均をはるかに下回る予想PER11倍近辺で取引されています1。この1年にわたって見られた中国株式市場の下落の大半は、企業業績の低迷によるものではなく、バリュエーションの低下によるものです。このバリュエーションの低下は主に、この資産クラスに上乗せされるリスクプレミアムの上昇と、国内外の投資家の信頼感の喪失の両方を反映しています。市場が回復するためには、この投資家の信頼感を取り戻すことが重要な第一歩となります。

この一歩を踏み出すためには、中国経済の先行きに改善の兆しが見えることが極めて重要となるでしょう。国内消費の上昇——縁起が良いとされる辰年の出生数増加が追い風になりうる——はまさに、そのような兆候になる可能性があります。消費関連の数字はまだ低迷しているものの、最近オープンした深圳のコストコでロッツォ・ハグベア(ピクサーの映画「トイ・ストーリー3」に出てくる悪役のテディベア)を入手するために長い行列ができ、ソーシャルメディア上でこの5フィート(約152センチ)大のテディベアが熱狂的に取り上げられたことなどは、中国の消費者が健在であることを物語る事例的な証拠になるかもしれません。

第3に、中国が2024年中、イノベーション主導型経済への移行をどれだけ進められるかが、その長期的な経済的成功のカギとなるでしょう。弊社は、中国が戦略的な経済的岐路に立っていると見ています。一方では、資本集約的な不動産とインフラに基づく以前の成長モデルから徐々に脱却する必要があります。もう一方では、それに代わる成長を他の分野から見出して、特に、より価値の高いイノベーション主導のセクターに軸足を移す必要があります。ちなみにこれは、韓国がかつてたどった道筋です。

この経済の方向転換を実現するには、重要技術への継続的かつ高水準の資本投資(人的資本を含む)が不可欠となります。いくつかの点で、中国はすでに十分に進んでいます。産業オートメーション、グリーンテクノロジー、電気自動車、自動運転、再生可能エネルギー、ソフトウェアなどの分野では、すでに大きな進歩を遂げています。しかし全体的には、イノベーションと新しいテクノロジーの開発を中心とする新たなモデルへの移行において、中国は比較的初期の段階にあるように見受けられます。多くの銘柄のバリュエーションが低下し、より魅力的な水準に水準になっているだけに、投資家はこうした分野に、とりわけ興味深い投資機会を見出すことができます。

辰年だからといって、中国が最近直面している逆風が魔法のように消えることはないでしょう。しかし、政策対応が本格化する中、市場のセンチメントがようやく回復し、中国企業が開発している魅力的なイノベーションにしかるべき注目が払われるようになるかもしれません。

1 Bloomberg, 29 January 2024

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