Achieving Sustainability

COP 28レビュー:終わりの始まり?

激しい議論が交わされたCOP 28での最終合意は、弊社の控えめな期待を上回ったとはいえ、気候リスクが高まる中で必要とされるレベルを大幅に下回るものでした。よいニュースとしては、気候に関する難しい課題(問題だけでなく)に対するソリューションをめぐる気運が高まっていることが挙げられます。

12月にドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP 28)は、「化石燃料からの脱却」の誓約が閉幕の間際に合意された会議として記憶されるでしょう。

化石燃料が気候変動に寄与していることに公式に言及した、この世界の指導者らによる歴史的な合意は、化石燃料時代の「終わりの始まり」とうたわれています1。 確かに、これは気候変動対策の加速に拍車をかけるはずであり、「世界再生可能エネルギー3倍・エネルギー効率改善率2倍」宣言 (Global Renewables and Energy Efficiency Pledge)2や、石油・ガス脱炭素憲章(Oil and Gas Decarbonisation Charter)3などの新たなイニシアティブの公表は、歓迎すべきことでした。

しかし、「脱却」という文言については、著しく広い許容範囲が存在し、現状の拘束力のある約束は依然として不十分です。2024年が歴史上最も暑い年になり、一時的に1.5℃の閾値さえ超える恐れがある中で4、既に明白になっている気候リスクの高まりを最小化するために、全てのステークホルダーから緊急に実用的な対応が必要となります。

calendar気候変動のコストを把握する

データを利用することにより、より対象を絞ったソリューションが可能になるため、気候変動との闘いにおいてデータは極めて重要です。このため、COP 28における、民間・公共セクターにとっての説明責任及び気候移行データの両方に関する比較的地道な進展が、重要である可能性があるのです。

ネットゼロ政策に対する説明責任を求めるネットゼロ移行憲章(Net Zero Transition Charter)5の立ち上げは、民間部門に関しては「ネット・ゼロ・データ・パブリック・ユーティリティ」(Net Zero Data Public Utility)6、国家に関しては「国家の気候関連機会及びリスクの評価」 (Assessing Sovereign Climate-related Opportunities and Risks:ASCOR7)、そして具体的な排出源及び資産に関しては「クライメート・トレース」(Climate TRACE)8などといった、排出量データ・イニシアティブによって補完されました。開示を動員する上で重要なことは、これらのイニシアティブが必要な対象にもっと的を絞った投資を支えるはずであるということです。

calendar気候ファイナンスにつぎ込まれる資金は増加したが、その額は十分か?

気候ファイナンスは、弊社の予想以上に注目されましたが、その議論の内容が誓約やシンクタンクの域を超えることはほとんどありませんでした。世界気候ファイナンス枠組み宣言9、並びに世界気候金融センター及びアルテラ(ALTÉRRA)の300億米ドルの投資ファンド10の発足は、ソリューションに焦点を当てる意図を示す、前向きな進展の一部です。

しかし、年間1,000億米ドルの気候ファイナンスのコミットメントを実行できなかったことや、2030年までに新興市場及び開発途上国(中国を除く)がパリ協定の目標を達成するために必要とされる概算2.4兆米ドルの年間投資額が大幅に未達となっていることを考えれば、これらのイニシアティブは、具体的な構造的計画に変換される必要があります11

COP 28は、気候変動に取り組む脆弱な国々を支援するための損失・損害基金の運営及び資金調達に関する、華々しい見出しで幕を開けました12。同基金へのコミットメントは、会議の終了までに総額7億米ドルを超えましたが、年間拠出額及び世界銀行が資金を管理するための仕組みに関して、より具体的な詳細が必要です。さらに、開発途上国による適応のための想定コストを満たすためには、年間拠出額を当初提案されていた1億米ドルの数倍にする必要があります13

calendar健康:緊急治療室の中で

世界保健機関は、気候ショックによる健康への影響に関する議論は長年の懸案であったと強調しました14。 世界の医療費支出は、既に世界のGDPの11%に達しており15、気候変動が健康危機をさらに悪化させることが予想されます。140カ国以上の国々が「COP 28気候と健康宣言」16の支持を表明しており、これは、待ち望まれている、気候変動に対してより強靭な医療制度に対する投資への呼び水となる可能性があります。

1年を通して異常気象、サプライチェーンの混乱及び世界的な紛争が食料安全保障、食料の入手可能性及び値ごろ感に影響を与え続けたこの年(2023年)において、COP 28はテーマ別プログラムのうちの1日を世界の食料システムをめぐる問題にあてました。これは、気候変動によって食料システムが直面している巨大なリスクを認識する上で重要な一歩となりました。気候変動がもたらす世界の食料システムへの影響に対応するために150カ国の政府が署名した「持続可能な農業、強靭な食料システム、及び気候変動対応に関するUAE 宣言 」(Emirates Declaration on Sustainable Agriculture, Resilient Food Systems and Climate Action)17は、重要な成果です。

このCOP 28においては、食料及び農業システムを支えるための資金調達、1.5℃の限度内での飢餓根絶に向けた国連食糧農業機関による包括的なロードマップ18、及び農業分野からのメタン排出がもはや無視できないものであるという認識など、他にも多くの前向きな発表がありました。

calendarしかし、生物多様性については2024年10月まで待つ必要がある

この数年間で、地球と人類の幸福の保護において生物多様性が果たす役割に関する理解が大幅に進展しました。COP 28の代表団は、世界気候サミットのサイド・イベントで取り上げられた、気候と自然に関する新たな宣言19及び具体的な生物多様性資金調達イニシアティブに署名しました。しかし、生物多様性に本当の焦点が当てられる舞台は、2024年10月と11月にコロンビアで予定されている、生物多様性専門の会合、国連生物多様性会議(CBD COP 16)となります20

結論として、最終的な文言に化石燃料に関する移行のコミットメントを含めることに土壇場で合意できたことが、COP 28を救い、COP会議がどうにか存続できることを保証することになったと言えるのかもしれません。ただし、今後もその意義を保ち続けるためには、年次COPの形式と構成が進化する必要があるでしょう。

例えば、この会議は、軽んじられてきた利益をもっと適切に反映できるはずです。現在の参加者は、特に排出量が高い一方、受ける影響は最も少ない地域に偏っています。さらに、近年の化石燃料関連の代表者の参加の増加は、全体の参加者の増加を上回っています。このバランスを改善することにより、急激に加速する気候変動の影響を認識し、投資先及び投資額をより明確に特定し、より若い世代の切迫感を反映することができるでしょう。弊社は、そうでなければCOPの意義は低下し、高額の費用がかかる道楽とみられてしまうリスクがあると考えています。

それでも、地球が直面する重要な問題のいくつかに対処するための具体的なイニシアティブがドバイで生まれたことは、歓迎すべきことに他なりません。

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