日本株月次レポート:2025年9月

持続的な株高を支える企業統治力

2025年8月中旬、日経平均株価は過去最高値を更新しました。

FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測に加え、日本の政局動向から財政拡張への期待も市場の押し上げ要因だったと考えられます。企業業績に関しては、2025年度の業績は減益が予想されていますが、米関税政策の方向性が見えてきたため来年度以降は増益トレンドに回帰すると見込まれております。

こうしたなか年初来で最も上昇したセクターは「その他製品」(注1)であり、特にIP(Intellectual Property:知的財産)関連企業がその牽引役となりました。ゲーム、キャラクター、アニメ、映画など個人の強い志向に支えられるIPは、関税、為替、地政学リスクといった外部環境の影響を受けにくいと考えられています。本年4月の市場急落局面でもこうした企業は、“好きなものには高くともお金を使う”であろうとの見方から関税影響が軽微な企業として選好されました。その後も日本のIP事業の強さに着目した買い意欲が続き上昇を続けてきました。

日本のIP企業の代表的企業としては任天堂が挙げられます。世界的なゲーム企業へと成長させた中興の祖である第三代社長・山内溥氏の座右の銘は、「失意泰然・得意冷然」と伝えられています。当たりはずれの大きい娯楽業でのゲーム事業が業績を左右するため、市場が過熱する時も、逆風が吹く時も、冷静に構えぶれない軸を持つことを重要視し、「運は天に任せ、与えられた仕事に全力を尽くす」と同社の社名の由来となったと言われています。(注2)

世界的な人気をもつハローキティで有名なサンリオの株価も大きく上昇しました。第二の創業と位置付けた前中期計画で業績をV字回復させました。「組織風土」、「構造改革」、「再成長の種まき」という3本柱を軸に2020年に社長に就任した辻朋邦社長のリーダーシップの成果と考えられます。サイロ化した部門の組織の壁を取り払い、全社最適を進めるため経営チームを刷新し、事業戦略を練り、社外取締役からも新たな知見を取り入れ、改革を進めてこられました。自社IPの強みを全体最適に導く組織改革の成功事例といえます。(注3)

今年の株式市場は、まさにこれらの姿勢が求められる局面であると感じます。自分ではコントロールできない外部環境は泰然と受け止め、自社の強みを磨き続けることが重要であると考えます。

外国人投資家の観点から日本株市場の魅力として、引き続きガバナンス改革が挙げられます。機関投資家は、資本効率を引き上げ、資本コストを下げる(つまりエクイティスプレッドを最大化させる)ことを志向し対話に臨み、ガバナンス改革は着実に進んでいます。

取締役会の実効性に関しては社外取締役の方々の「少数株主の代弁者」としての機能に期待しています。外部の立場である機関投資家にとっては、組織内の風土や暗黙知を正確に把握することには限界があります。社外取締役は、社外という中立的立場でありながら執行役から綿密な情報提供を受け、取締役会で意見を述べる機会をもつため、その役割は重要と考えます。

常日頃から取締役会において「株主の代弁者」と議論していれば、内輪の理論や組織間の利害調整から脱却し、自社の強みを活かした企業価値向上への取り組みが、企業文化として浸透していくものと思います。こうした自浄作用のあるガバナンスをもつ企業は機関投資家から高く評価され、信頼され、長期間の投資の対象となっていくと考えます。

個々の企業がもつ固有の強みが最大限に発揮されることで、日本の株式市場全体の魅力を高める原動力となり、持続的な上昇がもたらされると考えます。

 

注1 )日経平均が年初来高値を付けた8月18日までのセクターパフォーマンス、ブルンバーグより

注2 )任天堂 ”驚き“を生む方程式、井上理著、日本経済新聞社、2009、P256

注3 )株式会社 サンリオ 統合報告書 2024、P18

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