日本株月次レポート:3月 臨時版
上場会社役員ガバナンスフォーラム:「建設的な『株主との対話』を目指して」
3月上旬に、上場会社役員ガバナンスフォーラムの主催による「建設的な『株主との対話』を目指して」と題する講演とパネルディスカッションが開催されました。上場会社役員ガバナンスフォーラムは、プライム市場上場企業を中心に、経営トップ、社内外の取締役、常勤・社外監査役、執行役員など多くの経営陣幹部が登録しているフォーラムです。
コーポレートガバナンスのグローバルコンサルティングを行うMorrow Sodali社が進行を担い、同社シニアアドバイザーを務める浜辺真紀子氏が講演なさいました。浜辺氏は、外資系銀行を経て事業会社でIRの執行役員、現在は複数の企業の独立社外取締役としてもご活躍しておられます。
私もパネリストとして投資家の観点から考えをお伝えする機会をいただきました。
浜辺氏からは、株主以外のステークホルダーも意識すること、株主の意見を経営陣へフィードバックすること、そして資本コストの認識の必要性といった重要なテーマを中心に、わかりやすい説明がなされました。
印象深かった点は、企業を代表して面談に臨む方は、長期的経営の視点を持つべきという点と、投資家との対話はインタラクティブであるべきとの浜辺氏のご指摘でした。
私自身、企業の経営陣と面談させていただく機会は多く、業績動向だけでなく、中長期展望とESGの取り組みなど多岐にわたり議論いたします。もし自分自身が経営陣の一員であったらどういう経営施策を提案するだろうか、と想像しながら面談に臨んでいます。しかし現実には、あらかじめ想定問答集を作成していて、紋切り型な回答となっていると感じることがしばしばあることも事実です。
もちろん、フェアディスクロージャーの観点から同様の質問に関して回答を統一する必要があることは理解できます。しかし、この投資家がこの質問をしている背景は何かを考慮し、長期的視点をもったコミュニケーションを心がけていれば、自分の言葉で経営の方向性を説明できるものと考えます。自分の言葉で話す人との対話は自ずとインタラクティブになるものと思います。
打てば響くような回答をいただけると、再度この企業のこの方とお話したいと思うようになり、それを積み重ねて実際の投資行動につながるものと考えます。
このパネルディスカッションで、私から投資家の観点として要望させていただいた点は、このインタラクティブな対話をもう一歩広げて社外取締役の方々にも輪を広げていきたいという点です。私たちは、‘経営陣と適度な緊張感・距離感をたもち‘’中長期で幅広い多様な視点’(注1)をもつ社外取締役の役割に大いに期待しております。
社外取締役の皆様がどのような企業価値向上の道筋を描いているのか、また少数株主の代弁者として、どのような議論をなさっているか、ご自身の言葉で話していただくことは投資家にとって大変有意義であると考えます。自浄作用をもつ取締役会こそが、持続的成長をもたらす原動力となると考えます。
同時に、私たち機関投資家は、ESG情報を長期的な財務価値に結び付ける触媒として機能するべき役割を担っているとも考えます。企業の社会的存在意義は長期的に利益成長を維持する重要な要素であり、長期的な企業価値向上に向けた投資家の観点からの道筋を伝えることは、私たちの責務と考えているからです。
上場企業の情報発信を受け取る側の機関投資家の咀嚼力・対話力も必要であり、切磋琢磨していくことの重要性をあらためて感じさせるパネルディスカッションでありました。
注1:経済産業省「社外取締役の在り方に関する実務指針」https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200731004/20200731004-1.pdf
注2:当社のエンゲージメント活動に対する考え方の詳細はHP掲載のホワイトペーパーを参照:
https://jp.allianzgi.com/-/media/allianzgi/ap/japan-v2/pdfs/engagement-and-corporate-governance.pdf?rev=-1&hash=7F093E48381F891614D1FC45CAAF77D1
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