日本株月次レポート:4月
グラスルーツリサーチ®のさまざまな使い方
当社リサーチプラットフォームでまず挙げられる調査・分析力の特徴はグラスルーツ・リサーチ®(https://jp.allianzgi.com/about-grassroots-research)です。
約40年前、米国のポートフォリオマネージャーが「E.T.地球外生命体」のゲーム関連企業の株式に投資をしましたが、そのゲームソフトは期待ほど売れず株価は急落してしまいました。この失敗の反省から、事前の期待と実際の売れ行きの差を推測したければ直接消費者に聞くべきであろう、という発想から発展してきた当社独自の調査手法です。
グラスルーツリサーチ®は、調査員が一般の個人の方々に消費動向を尋ねたり、非上場企業に在庫の状況や景況感などを直接インタビューする調査方法で、質問する相手(最終消費者、小売店、代理店、メーカーなど)、質問内容また調査の実施時期もすべて運用者とグラスルーツ・アナリストが議論し、投資目的に即して判断します。
実際のインタビュー活動をする調査員の多くはジャーナリストであるため、本質を掴み、事実に即した記事を書くことに長けています。この草の根情報を投資の文脈で活用するためには、投資判断に資する時機を見はからい、カギを握る情報ソースに的確な質問を投げかけることが肝要となります。
グラスルーツリサーチ®の使い方は、大きく二通りあります。一つはコンファメーション型(確認)調査です。例えば大手スマートフォンメーカーの新モデルへの買い替え意欲を確認したり、ある新薬や新しい医療機器が世界の医療機関でどの程度浸透する余地があるかなど、主に特定企業の特定製品に関する調査です。
もう一つは、ポテンシャル型(潜在的需要の発掘)調査です。あえて様々な要素を質問に織り込ませて全体の需要動向とその中の比較において今後何が注目されるかを推測できる調査方法です。主に、投資アイディアを創出するために活用します。例えば、インバウンド旅行者の需要を調査するため、中国で一般の方々や旅行代理店に、日本への旅行でのモノ消費やコト消費で楽しみにしていること・人気のあることを質問し、中国人旅行者が本格的に回復したときにどの企業がその需要を取り込むことができるか予測しあらかじめ準備することができるのです。
ポテンシャル型調査として、日本国内での消費動向調査を毎年行っております。単純なアンケート調査とは異なるので毎年同じ時期とは限りません。運用活動において転換点となりうる時期をみはからって行います。コロナによる行動制限が解除される直前(制限解除で何を楽しみにしているか)、食品インフレが加速した時期(買い控えるものと高くても買うもの)、2023年に大幅な賃上げがあった直後(賃金上昇の期待とインフレによる家計圧迫の影響)などで調査を実施してまいりました。
現在、2024年の春闘の結果が耳目をあつめています。政府はインフレ率を超過する賃上げを鼓舞しています。そこで今回もグラスルーツ®によって、消費者は本当に高い賃上げが可能と期待しているか、持続的な賃上げ期待で家計の消費センチメントは改善するか、また賃上げが実現した際の消費の優先順位、という調査を行っております。この調査は、ポートフォリオ運用における投資アイディアの創出だけではなく、今後の日本銀行の金融政策を考えるうえでも示唆に富むものであると思います。
グラスルーツリサーチ®は当社の調査手法のひとつでありますが、使い方を工夫すれば多くの推論が可能となりこれらを結び付けることで当社の運用に寄与する独自の洞察につながるものと考えます。