AI主導の相場、キャリーは好調

要点
  • 市場の見方が変化するなか、コア債券のデュレーションを戦術的に積み増す投資機会が生まれています。こうした機会を捉えるには、柔軟性の高いグローバルなアクティブ運用が有効と考えます。
  • 金利の高止まりが続く環境下において、クレジットから得られる安定的なキャリー収益が債券リターンの中核として再び存在感を高めています。また、ポートフォリオの価格変動に対する重要な緩衝材としての役割も強まっています。
  • 高いキャリーが期待できる通貨(米ドル以外)や新興国債券は、魅力的な収益源と分散投資先となり得ます。その収益ドライバーは、AIを巡る市場期待の継続に大きく依存していない点も特徴です。
7月の振り返り

7月の市場は、原油市場とAI関連株の大きな値動きに左右されました。中東情勢の緊張が再び高まったことで、北海ブレント原油価格は一時1バレル100米ドルを上回りました。その後、地政学的な懸念が和らぐにつれ、市場の関心は第2四半期の企業決算へと移りました。半導体株の下落は、レバレッジ型の単一銘柄ETFやヘッジファンドによるポジション解消が重なったことで、一段と加速しました。一方で、エネルギー価格の上昇と底堅い経済指標を背景に、債券利回りは上昇しました。主要中央銀行は政策金利を据え置いたものの、引き続きインフレへの警戒姿勢を維持しました。また、月末には為替市場が大きく動き、米ドルに対して円が40年ぶりの安値を付けたことを受けて、日米当局による市場介入が円安進行の抑制を図りました¹。

当社の見解

AI大手企業(ハイパースケーラー)が発行する債券残高は約5,000億米ドル、さらにデータセンター関連債券残高も約1,000億米ドルに達しており(出所:Bloomberg、2026年8月)、AIはグローバル・クレジット市場において重要なセクターとなっています。7月のAI関連株の急落はクレジット市場にも波及し、ハイパースケーラーやデータセンター企業のクレジットスプレッドは拡大しました。しかし、当社は過度に懸念しておらず、信用力に確信を持てる発行体については、この足元の価格調整を投資機会と捉えています

歴史的に見ると、革新的な技術は例外なく大規模な設備投資サイクルを少なくとも一度は経験しています。1990年代の通信ブームでは、光ファイバー網への巨額投資が需要を大きく先行し、その結果、多くの著名企業が経営破綻に追い込まれました。正しい方向性を見通していても、あまりに早い段階で過度なレバレッジをかけていたことが大きな代償につながったのです。当社はAIも完全に同じではないものの、類似した道筋をたどる可能性が高いと考えています。最も大きな打撃を受けるのは、一般的に過度な負債を抱えた企業、後発参入企業、あるいは規模や競争優位性、明確な差別化要因を欠く企業でしょう。

クレジット投資における当社のアプローチは一貫しています。ファンダメンタルズを重視し、独自の調査を行い、厳選された投資プロセスを維持するとともに、規律あるリスク管理を徹底しています。当社は引き続き主要ハイパースケーラーに対して前向きな見方を維持しています。発行増加による需給の消化や市場のテクニカル要因からスプレッドは拡大しているものの、強固な財務基盤、多角化された事業モデル、そして格付け面での十分な余地が、引き続き堅固な信用力を支えています。データセンター分野では、投資適格格付けのハイパースケーラーとの長期契約を有し、プロジェクト完遂への明確な道筋があり、フリーキャッシュフローの創出および財務レバレッジ低下の見通しが高い発行体を選好しています。

AI関連以外では、足元の債券市場の変動はクレジット(スプレッド)リスクよりも金利(デュレーション)リスクによって左右される傾向が強まっています。このため当社は、大きな相場方向性への賭けよりも、主要国金利市場における機動的な投資や相対価値戦略を選好しています。特に、異なる年限間の金利変動を捉えるイールドカーブ戦略は、引き続き有力なアルファ源泉の一つと考えています。当社は主要国の国債市場でスティープナー戦略を選好していますが、その投資ロジックは地域ごとに異なります。こうした経済環境の違いは、イールドカーブのスティープ化を後押しするだけでなく、相対価値投資の機会も生み出しています。

金利水準が高止まりする環境においては、グローバル・マルチストラテジー・アプローチにより、多様な債券セクターの中から耐久性の高い投資機会やアルファ源泉を発掘し、ポートフォリオの分散効果²とショック吸収機能を提供できると考えています。戦略的資産配分の観点からは、総合的に魅力的な利回りを提供する質の高いスプレッド商品を選好しています。そこではキャリー収益が依然として重要な収益源となります。なかでも金融機関が主な発行体である投資適格の変動利付債は、魅力的なインカム収益と金利上昇への耐性を兼ね備えた、ポートフォリオの中核資産になり得ると考えています。

また、ハイイールド債券はポートフォリオのインカム収益を高めるだけでなく、株式市場の変動を和らげる効果も期待できると考えています。7月はキャリー収益の強靭性を示す月となりました。半導体株指数が20%超下落する一方で、グローバル・ハイイールド債市場の下落率はわずか0.3%にとどまり(出所:Bloomberg、2026年8月)、広範な投資適格債市場を上回るパフォーマンスを記録しました。デュレーションの短さと高いクーポン収入がスプレッド変動の影響を相殺し、ハイイールド債がショック吸収材として機能することを改めて示しました。エネルギー関連ハイイールド債や新興国債券の堅調なパフォーマンスは、特に伝統的な国債投資が逆風にさらされる局面において、グローバルに分散された債券ポートフォリオの有効性を裏付けています。総じて、当社は足元のAI関連市場の変動をシステミックな危機とは捉えておらず、むしろアクティブ運用によって投資機会を見出せる局面だと考えています。一方で、市場全般については、大きな方向性への賭けよりも、キャリー収益の獲得と銘柄選別を重視する姿勢を維持しています。

今月のチャート:データセンター事業における典型的なキャッシュフロー推移および負債削減のイメージ

足元のハイパースケーラーの債券や株式の軟調な動きは、信用力の低下への懸念というよりも、AI関連の巨額な設備投資負担や、その投資に見合う長期的なリターンへの疑問が主な要因となっています。当社は引き続き、2026年から2027年にかけて契約済みのハイパースケーラー需要に支えられたデータセンター関連のクレジット投資に前向きな見方を維持しており、ハイパースケーラーのバランスシートに直接投資するよりも、厳選したデータセンター投資を選好しています。具体的には、主要都市圏に資産を保有する大規模かつ事業分散の進んだ投資適格のデータセンター事業者や、主要ハイパースケーラーとの長期契約によって稼働率が100%確保されているハイイールド・データセンタープロジェクトを有望視しています。こうした投資には将来収益の予見性が高いという利点があります。既にテナントによって利用容量が確保されているため収益基盤が明確であり、また建設投資は運営開始前に完了することから、稼働後に生み出されるキャッシュフローを負債削減に充てることが可能なためです。

出所:Allianz Global Investors、2026年8月時点。

過去の実績や予測、予想、見込みは将来の実績を示すものではなく、また、将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。

今後の注目ポイント
  • 円相場
    8月に入り、円は再び対米ドルで下落し、日米当局による為替介入後に回復した上昇分の約半分を失いました。今後は、日米の金利差に加え、日本の財政見通しへの懸念を背景に、再び円安圧力が強まる可能性があります。円は世界の主要な資金調達通貨の一つであるため、その大幅な変動は為替市場全体の不安定化につながるリスクがあります。
  • ジャクソンホール会議
    FRBのケビン・ウォーシュ議長は、政策金利の据え置きを決定した前回会合後の慎重な情報発信を受けて、市場金利が上昇したことから、今後より厳しい説明を求められる可能性があります。8月にはFOMCの予定はありませんが、新たなインフレ指標の発表が控えています。ウォーシュ議長にとって、次の市場との対話を図る重要な機会となるのが、毎年8月に米ワイオミング州ジャクソンホールで開催される世界の中央銀行関係者による経済シンポジウムとなる見込みです。

  • ホルムズ海峡
    米国とイランの最近の発言を見る限り、ホルムズ海峡の早期再開を示唆する材料は乏しく、市場が期待するような合意が近く実現する可能性は低いとみられます。足元のエネルギー市場はニュース報道に左右されやすい状況が続いていますが、これまで市場を支えてきた在庫余力は世界的に縮小しつつあります。そのため、原油価格については上昇リスクが意識されやすい環境にあると考えられます。

     

¹ 出所:Bloomberg(2026年8月時点)。
² 分散投資は、利益の確保や損失の回避を保証するものではありません。

Top Insights

市場展望インサイト

インフラ分野には多様な投資機会がありますが、リスク面の制約から投資家の多くは先進国市場への投資にとどまっていました。しかし、ブレンド・ファイナンスの活用が進み、現在、新興国への投資機会へのアクセスは大きく広がりつつあります。

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日銀は次回会合で政策を据え置きつつも、引き締めバイアスを維持すると見込まれています。市場にとっての最大の関心事は、円安の再進行やエネルギー価格の上昇を受けて、日銀がより強い引き締め姿勢を打ち出すかどうかです。政策当局はこうした動向を認識しつつも、次回利上げの時期については慎重な姿勢を維持し、強いシグナルを発することは避けると予想されます。

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最近の経済指標は、金融政策の見通しを大きく変えることなく、FRBに一定の「様子見」の時間を与える内容となっています。6月の消費者物価上昇率は鈍化し、労働市場もやや過熱感が和らいだことで勢いが落ち着きました。このため、FOMCは7月28~29日の会合で、FF金利の誘導目標を3.50~3.75%に据え置くと予想しています。

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