キャリーが生きる市場局面へ

2026年のマクロ経済の見通しは、より狭い範囲に収まると予想しています。私たちの基本シナリオは、全体的に金融環境が緩和的な「リフレーション型」のマクロ環境であり、これはキャリー戦略に追い風となります。また、足元では人民元が加速的に上昇し始めている点にも注目しています。

要点
  • キャリーとロールダウンは、相場が一定のレンジ内で動く局面では概ね効果的に機能する。
  •  スプレッドがタイトな環境では、上方向の非対称なリスクが高まるため、銘柄選択に一層の注意が求められる。
  • ファンダメンタルズと構造的な確信を軸に、アクティブな運用スタイルと規律あるリスク管理を組み合わせることで、ボラティリティ発生時の投資機会を捉えやすくなる可能性がある。
1月の振り返り

投資家は、2026年入りとともに「手には新規発行(債券)が山積み、頭にはニュース(ヘッドライン)が山積み」という状況でスタートしました。

米連邦準備制度理事会(FRB)、日本銀行、カナダ銀行による“サプライズのない”政策判断を受け、投資家の関心はメッセージ、見通し、企業決算、そして地政学イベントに向けられています。

「対話の精神」をテーマに掲げたダボス会議では、グローバル投資家の注目が政策リスクや地政学リスクに再び向けられました。

米国では、ドナルド・トランプ大統領によるグリーンランドに関する発言や、FRB議長人事をめぐる不透明感が、米国の経済指標が堅調であったにもかかわらず、米ドルのパニック的な売りを引き起こしました。

太平洋を挟んだ日本では、高市早苗首相が2月8日の総選挙を電撃的に表明し、財政拡張に向けた強い政治基盤の確保を目指したことを受け、40年国債利回りが史上初の4%に達し、世界的な金利市場が一時的に動揺しました。

中国では、人民元がここ数週間で加速度的に上昇し始めており、中国人民銀行は日々の基準値を段階的に強めて設定しています。これは重要な政策転換を示唆しており、その影響は広範囲に及ぶとみられます。

私たちの見解

2026年については、マクロ経済の振れ幅は、より限定的になると想定しています。私たちの基本シナリオは、金融環境が全体として緩和的な「リフレーション型」のマクロ環境であり、キャリー戦略にとって追い風となります。

各国の金利環境について、主要国の金融政策はすでに、もしくは近い将来、中立的な水準に達すると見られます。リフレーション方向のバイアスを含むレンジ相場では、名目デュレーションを積極的に伸ばすことは望んでいません。日本からの資金還流リスクは市場で過小評価されていると考えており、OECD諸国の財政悪化も同様に十分に織り込まれていないとみています。こうした見方は、イールドカーブがスティープ化するポジションで反映するのが適切だと考えています。

為替については、1月の米ドルの下落は米国経済の弱さによるものではありません。本来であれば、堅調な経済データやエネルギー価格の高騰は、ユーロ圏や日本と比べても、米ドルにとって支援材料になるはずです。むしろ今回の動きは、FRBの独立性や制度的信認に対する懸念、米国の外交政策など、複数の非経済的要因に基づくリスクプレミアムの再評価が引き金になりました。その後、トランプ氏がケビン・ウォーシュ氏を次期FRB議長に指名したことで、米ドルはいったん持ち直しました。それでも、米ドルが構造的に弱含むという私たちの見方は変わっていません。米ドルは依然として割高であり、時間とともに平均値へ回帰するという見方は妥当だと考えています。この見方は、アジア通貨の選別的なロングや、高キャリーの新興国通貨ロングよって反映するのが適切だと考えています。

グローバルクレジットでは、ヘッドライン利回りは依然として魅力的で、企業ファンダメンタルズも十分に堅調であるため、クレジットのキャリーを取る環境は引き続き良好です。BBB格とBB格の債券を組み合わせたポートフォリオは、過度な脆弱性を抱えずに良好なインカムを得られる「スイートスポット」になり得ます。ただし、スプレッドがタイトになるにつれて非対称なリスクが高まります。景気サイクルが転換しつつある国やセクターでは、銘柄選択をより慎重に行う必要があります。

名目デュレーションを積極的に長く持つことは望んでいませんが、高品質のデュレーションは、マルチセクター債券ポートフォリオにとって依然として、リスクオフ局面に対する非常に有効なヘッジです。現在は、キャリーやロールダウンを通じて、そのヘッジを以前より良い条件で保有できる状況にあります。

新興国債券については、構造的な米ドル安とキャリー環境のもとでは、グローバル債券ポートフォリオにおける最良の分散手段のひとつであるという見方を維持しています。バリュエーションは割安とは言えませんが、2025年および2026年に見られた強いパフォーマンスが続く余地はあります。ただし、新興国市場は多様性が高く、2025年に最も取りやすかったリターンはすでに取られてしまったため、次の上昇局面ではより選別が重要になると考えています。

今月のチャート:人民元と円の対米ドルでのパフォーマンス

1月の米ドルの急落は、相対的な経済の弱さや金融政策の違いが原因ではありませんでした。最近の米国の成長指標は上振れが続いており、通常であればこれは米ドルにとって追い風となるはずです。特に、欧州や日本の指標が最近あまり良いサプライズを示していないことを踏まえればなおさらです。

さらに、天然ガス価格の上昇は、主要なガス輸出国である米国の通貨を支える一方、ガス輸入国であるユーロ圏や日本の通貨には重しとなるはずです。

実際には、今回の米ドル売りは、米国の制度的な信頼性、FRBの独立性、さらには米国の外交政策への懸念を背景としたリスクプレミアムの再評価によって引き起こされました。したがって、ケビン・ウォーシュ氏が次期FRB議長に指名された後、米ドルが反発したことは驚くべきことではありません。

それ以上に注目すべきなのは、過去50営業日における人民元の動きです。これは、中国人民銀行が人民元高を容認する方向に重要な政策転換を行ったことを示しています。他通貨の基準で見れば、これまでの人民元の動きは小幅と言えます。しかし、その影響は非常に大きく—場合によっては時代を画するほどです。

もし日本円がこの流れに加わるようなことがあれば、世界の金融市場に与える影響は極めて大きくなるでしょう。

出所:Allianz Global Investors, Bloomberg,、2026年1月31日時点。

過去の実績や予測、予想、見込みは将来の実績を示すものではなく、また、将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。

今後の注目ポイント
  • 企業決算
    これまでのところ決算シーズンは堅調で、S&P500企業の利益成長率は約12%と予想を上回っています。現在の利益成長ペースが続けば、5四半期連続の2ケタ成長となります。アナリストは、AI関連の設備投資に伴う利益率への圧力が出ないか注視しています。
  • 原油価格
    イランをめぐる地政学リスクの高まりは、ブレント原油価格を1バレル70ドル超へ押し上げる可能性があります。2月には、米国が原子力空母「エイブラハム・リンカーン」を狙ったイランの無人機を撃墜したと報じられています。それでも、米国とイランの交渉は継続するとみられています。原油価格が持続的に上昇すれば、ヘッドラインインフレ、貿易収支、消費者マインドに影響が及ぶ可能性があります。
  • 人民元と円
    中国人民元と日本円の割安さは、世界の金融市場で最も大きな「歪み」の一つです。ここ数週間、両通貨とも、特に人民元が異なる方向に動き始めており、背景となる要因はそれぞれ異なります。もし両通貨がこのまま上昇を続ければ(特に人民元はその可能性が高いと見ています)、世界の金融システムに与える影響は非常に大きなものになるでしょう。

Top Insights

市場展望インサイト

日本銀行(日銀)は、1月の会合で金融政策を据え置く見通しです。高市政権による財政支出の増加を背景に成長見通しの小幅な上方修正が見込まれる状況下、経済成長とインフレの組み合わせの変化に投資家の注目が集まると見られます。

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テクノロジー関連

人工知能(AI)は、近年、世界の金融市場における最大のテーマとなっています。私たちの見方では、短期的な市場の変動は避けられないものの、AIの長期的な成長ポテンシャルは依然として過小評価されていると考えます。実際、現在の市場サイクルは決して終着点ではなく、今後何年にもわたる変革的な成長の基盤となり得る段階にあると考えています。

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世界経済は、逆風こそあるものの、底堅さを見せつつ2026年を迎えます。引き続き成長を維持し、リスクテイクを後押しする環境となる見込みです。底堅さと複雑さが同居する一年となり、アクティブ運用の重要性が一段と高まるでしょう。

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