鉱物価格入門:カリ

カリは、カリウムを多く含むさまざまな化合物をいい、一般に地下の鉱床から採掘されます。カリの最も一般的な用途は、農業用の肥料です。カリウムは、ストレスや病気に対する植物の抵抗力を高め、雑草や害虫を抑制し、植物が土壌から水や養分を吸収しやすくすることによって、作物収量を大幅に増やすのに役立ちます。

要点
  • 世界人口の成長とそれに伴う食料需要は、カリの需要に拍車をかけています。
  • カリ肥料は、作物収量の維持と増加に不可欠です。
  • ロシアとベラルーシはどちらも、カリの主要生産国です。

カリウムは、窒素、リンとともに、植物の健全な生育に必要な三大栄養素の一つです。農業以外の用途―消費量全体のおよそ15%―には、アルミニウムのリサイクル、ビールの醸造、合成ゴムの製造などがあります1。カリの需要が今後数十年にわたり大きく伸びることを示すグローバルなトレンドがいくつかあります。まず、人口が着実に増加していることは、言うまでもなく食料需要が伸びているということであり、その需要を限りある農地で満たさなければなりません。しかも、この作物収量の増加とより集約的な食料生産のニーズは、一部の地域で土壌の肥沃度が低下している中で満たさなければならず、効果的で安全な肥料の使用がいっそう不可欠となっています。カリは、通常採掘によって生産されますが、環境フットプリントがそれほど大きくないという点で、他の多くの化学肥料よりもはるかに魅力的です。具体的には、一部の化学肥料に比べて生産に必要なエネルギー消費量がかなり少なく、使用によって河川の健全性を脅かすこともありません。

 

業界の概況

カリの商業生産は、数百万年前に水分が蒸発して形成された鉱床で行われます。こうした蒸発岩は通常、地中の奥深くに存在しているため、鉱石を地表に運んで精錬する伝統的な地下採鉱で採取されます。代替的な生産法として、地下鉱床に水を注入し、鉱床を溶解して地表に汲み上げ、乾燥させて水分を蒸発させる溶解採鉱法などがありますが、従来の採鉱法よりも多くのエネルギーと水を消費します2。世界のカリ生産は現在、カナダに集中―2020年の産出量は世界全体のおよそ3分の1―しており、ロシア、ベラルーシ、中国も主要産出国です。

市場の構造に関しては、カリ市場は統合が進んでおり、10大生産者が世界の供給量のおよそ85%を支配しています。これらの大手生産者が通常、需要に応じて価格を設定し、規模の小さい生産者はほぼ、大手が設定した価格に従う格好になっています。

図表1:世界生産量に占める割合

出所: U.S. Geological Survey, Mineral Commodity Summaries, January 2022

供給、需要、価格の見通し

世界人口の成長とそれに伴う食料需要に加え、開発途上国における都市化による耕作可能地の減少を考えると、カリに対する需要は当面の間、大幅な成長が続くと予想されます3

実際、ここ数十年、カリの生産量の伸びは作物生産の伸びを上回っています。同時に作物生産の伸びも、人口成長を上回っています。

さらに、現在のところ、カリ肥料の代替となる肥料は知られていません。価格上昇対策として、農家が時折カリ施肥の休止期間を設けることもありますが、土壌のカリウム濃度を高く保つことが安定した作物収量と農業の収益性に不可欠とみなされていることから、通常は短期間にとどまります。

図表2:世界のカリ消費量の伸び(2015~2020年の年平均成長率)

出所: FAO (2017), FD

供給に関しては、現在のウクライナ紛争がある程度の影響を及ぼしています。現時点では肥料は制裁対象になっていないものの、黒海を通過する船舶の保険コストが跳ね上がるなど、物流上の理由から貿易が停滞しています4。現在、ロシアとベラルーシからの輸出量の減少に伴う不足に対処する他の生産地の能力は限られており、すでに需給が逼迫している市場でのこのような不足は、当面の間、価格をかなり下支えをするだろうと見られます。現実的に、紛争が長引けば、こうした問題は悪化の一途をたどるでしょう。
図表3:年平均成長率、1993~2020年(%)

出所: BHP, Potash outlook and fundamentals, 17 June 2021

1) https://pubs.usgs.gov/periodicals/mcs2021/mcs2021-potash.pdf
2) BHP, Potash outlook and fundamentals, 17 June 2021
3) Fox-Davies, “Potash & Phosphate – Investing in Global Growth”, Mining, 16 July 2021
4) Deutsche Bank Research, “European Fertilizers”, Industry Update, 8 March 2022
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