暗さ増す株式市場の見通し
ここ数週間の金融市場のパフォーマンスを振り返ると、春の明るい緑が重苦しい秋の色合いに変わりつつあるような印象を受けます。
実際、2022年の余波は、債券利回りの上昇圧力、株価の下落圧力、エネルギーの輸入依存度が高い国々の成長見通しをめぐる懸念の増大となって現れ、ますます無視できなくなっています。
2022年の市場ショックは、異例の金融・財政緩和策が続いた結果であり、先進国の中央銀行は歓迎されざるインフレの発生に対処するために急激な方向転換を余儀なくされました。それでも、市場の見通しの改善をめぐる今年の楽観的な見方の大半は、インフレ圧力が緩んだことを示す証拠に根差していました。
何が変化したことで、雰囲気が悪化したのでしょうか?
最初に注目すべき点として、株式市場は昨年10月の安値と比べると、著しく上昇しています。これは一部には、業績が上向いたことを反映しています。しかし多くの場合、経済情勢の安定化に対する信頼感が高まったことで、業績がかなり先まで織り込まれてマルチプルが上昇し、その結果として株価が上昇しました。
けれども、同じことが債券市場にも言えるわけではありません。債券市場では当初、金利がエッフェル塔のような形を描く(すなわち、急速に上昇した後で中央銀行による急激な緩和が起こる)と予想されていました。しかしこの予想は次第に、新型コロナ後の金利の「ニューノーマル」(新たな標準)は以前に比べはるかに高いものになるという見方に取って代わられつつあります。その結果、長期利回りが徐々に上昇しています。最初の頃、利回り上昇のけん引役は、インフレ期待の上昇でした。その次は中央銀行の対応であり、中央銀行の引き締め政策によってイールドカーブ全般で金利が上昇しました。最近では、中央銀行の金融引き締めが減速しているにもかかわらず、長期の実質金利(債券の利回りとインフレ期待との差と考えられる)がさらに上昇しています。
今週のチャート
インフレショックの後、実質金利が上昇
利回りの上昇には、主に3つの原因があると考えられます。
一つ目の、そしておそらく影響が最も少ないと思われる原因は、イールドカーブコントロールを緩めるという日本銀行の決定です。結果として、日本国債の利回りが急上昇し、デュレーションに対する需要がマイナスのショックに見舞われる中で他の市場にも影響が波及しました。
最近では、原油供給削減を年末まで延長するというサウジアラビアとロシアの決定を受け、市場が激しく反応しています。ブレント原油価格は9月だけで10%以上上昇し、6月の安値と比べると3割以上も上昇しました。各国中央銀行が目標水準への速やかなインフレ低下の確認を望む中、新たな価格ショックはむしろ状況を悪化させます。この点に関する代表例はおそらく、欧州中央銀行(ECB)でしょう。ECBは、成長停滞の兆しやユーロ圏のマネーサプライの縮小傾向にかかわらず、9月に利上げを実施しました。
最後に、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は利上げを見送ったものの、FOMCメンバーの政策金利予測の変化は、2024年の見通しがかなり厳しいことを示唆しています。市場は、コアインフレの下落により、成長が回復しても米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切る余地が生まれることを期待していましたが、FRBの予測からは、成長に有利な環境が続くならば、金利は高水準で維持されるというメッセージが伝わってきます。
利下げに対する市場の期待がしぼんだのは当然であり、その結果、債券利回りは、引き締めサイクルの終わりがおそらく近いことを考えると、異様な上昇を見せています。
資産配分に関して考慮すべきポイント
これからの四半期の市場に影響を与える主な要因として、以下の4つが考えられます。
第1に、米国と中国に見られるように成長が鈍化する中、あるいは多数の欧州諸国に見られるように成長が縮小に転じる可能性がある中、金融引き締めの影響が次第に明白になることが予想されます。これは、業績上昇の期待がパフォーマンスに最も寄与する株式市場にとっては厳しい状況であり、安定した配当収入に頼る戦略の相対的な強みを物語っています。
第2に、原油価格の上昇を背景にインフレの高止まりが見込まれることは、成長が強まっても、株式市場が恩恵を受けられないことを意味します。というのも、ここ数カ月に見られたように債券利回りが結果的に上昇し、株式市場の上昇余地が削られるからです。それよりも、需要のある程度の軟化とインフレのさらなる低下を示す証拠が、金利に対する期待の安定化には不可欠になると思われます。
第3に、弊社は金融安定リスクが依然として高いことを意識しており、ボラティリティ上昇の条件が揃っていると考えています。現在はサイクルの後期段階にあるため、主要中央銀行によるこれ以上の引き締めは、金融の安定をさらに試すものとなるでしょう。
最後に、先月も取り上げたように、債券利回りの上昇により、債券市場は戦術的な配分に関し、他の資産クラスと比べて相対的に競争力が増しています。
結論として、今年は秋の憂いを帯びた雰囲気を払拭するのは難しそうです。こうした状況を背景に厳しさを増す市場環境に備えたポジションを取るのが、最も賢明な道のように思われます。