乖離するトレンド

資本市場はここ数週間、やや落ち着きを欠いています。市場参加者が神経質になっているのには、中東での紛争などいくつかの明白な理由がありますが、根底にあるトレンドの乖離も一役買っている可能性があります。もちろん、乖離が混乱につながるとは限りませんが、結果としてさまざまな資産クラスと地域で潜在的なリターンの幅が広がる可能性があります。

主要中央銀行の金融政策の道筋が次第に違いを示し始めていることがおそらく、資本市場のトレンドが乖離している主な理由の一つでしょう。まず、米連邦準備制度理事会(FRB)を見てみましょう。FRBは3月、フェデラルファンド金利を年内3回にわたり25ベーシスポイント(bp)ずつ引き下げる意向を改めて示しました。しかし、3月のインフレ指標が再び高い水準となったことで、この発表に対する金融市場参加者の信頼は失われました。市場は現在、12月までの利下げ回数を1.5回ほどと予想しています。

対照的に、欧州中央銀行(ECB)は、6月に主要金利を引き下げると予想されています。実際、ユーロ圏の金融政策当局者の一部はすでに、直近の4月の会合で利下げに賛成票を投じていた可能性があります。ECBの利上げは、米国の場合よりも成長率とインフレ率を鈍化させる効果があったように思われます。しかし、賃上げ交渉が2%のインフレ目標と両立しうるかどうかは、まだ完全には明らかになっていません。

一方、アジアの状況は米国や欧州とは異なっています。日本銀行は、低・マイナス金利の時代に終止符を打つための慎重な第一歩を踏み出したばかりです。主な狙いは、数十年にわたるデフレを国民の記憶から払拭するのに十分なインフレ率を維持することにあります。対照的に、中国の政策当局は、ようやく芽吹いた国内の成長を育てることに腐心しています。必要であれば、入念に計算されたさらなる景気刺激策を提供することもいとわないと思われます。

このように異なる政策見通しは、何よりも債券市場と為替市場に影響を与えます。米国の債券利回りは再び上昇傾向にあり、市場参加者は利下げの後ずれと規模縮小を予想しており、米金利の再引き上げの可能性もいまや完全には排除できなくなっているように思われます。金利差は、最も重要なグローバル通貨である米ドルに有利に拡大しています(「今週のチャート」参照)。その結果、ドル高が進んでいます。

ドル高が長く続いた場合、相対的に高い米利回りと強い米ドルは、他の国々、特に新興市場にとって逆風になりかねません。というのも、「金融条件」がさらに抑制的になるからです。簡単に言うと、米国以外の国々では、米ドル高にならなかった場合、あるいは自国通貨安にならなかった場合よりも金融政策が引き締まりやすくなるということです。

今週のチャート

金利差は米ドルに有利
米ドルとユーロ(左)、米ドルと円(右)の2024年12月時点の予想中央銀行金利差、年初来

出所: AllianzGI Global Economics & Strategy, Bloomberg, 2024年4月24日 現在のデータ

来週を考える

来週は再び、米国が脚光を浴びることになります。水曜日に予定されている連邦公開市場委員会(FOMC)会合は、パウエルFRB議長が近い将来の利下げにする市場の疑念を肯定あるいは否定する機会となります。会合の時点で4月の米労働市場の動向が詳しく分かっていればFRBの助けになるでしょうが、米雇用統計の発表は金曜日を待たなければなりません。他にも投資家が注目する景況感指標として、中国の購買担当者景気指数(PMI)(火曜日)、欧州委員会の景況感指数(月曜日)、全米産業審議会(コンファレンスボード)消費者信頼感指数(火曜日)、そして米国のISM製造業・非製造業PMI(水曜日・金曜日)などが控えています。インフレに関しては、ユーロ圏の4月の消費者物価指数速報値が特に注目を集めそうです。

地域間で潜在的なリターンに乖離が生じている環境下では、投資ポートフォリオの運用がより難しくなる可能性があります。同時に、地域的な違いは、特に債券市場と為替市場でアクティブ投資家に魅力的な機会をもたらします。

 

投資において、こうした乖離するトレンドを有利に生かせますように。

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この2年間は、ユーロ圏経済にとって非常にストレスの大きいものでした。他の経済圏に比べ、ウクライナ戦争の勃発とエネルギー供給網の断絶に大きな影響を受け、マイナス金利による異例の景気刺激策から金融引き締めへと急激な金融政策の転換を余儀なくされました。

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