ドイツと中国の株式市場、突如として好調なパフォーマンス
ドイツと中国の株式が年初から相対的に好調な動きを見せています。特に、2022年につけた安値(ドイツは9月、中国は10月)から見ると、大きな回復ぶりです。ドイツ株価指数(DAX)はこの3カ月半で30%強、中国市場全体は20%上昇しました。
同時に、全体的な経済環境は、厳しさを増しているように思われます。主要なマクロ先行指標はこの間も低下を続け、2023年の成長予測は、ほぼすべてが非常に懐疑的な見込みを(現在も)示しています。2022年の年末にかけての主要機関の見立ては、先進主要国経済がリセッション(景気後退)入りしそうだということで一致していました。エコノミストの間で広がったこの懐疑的な見方が、今回の市場上昇の下地となったように思われます。実のところ、これは当然といえます。エコノミストの間では、ドイツはその天然ガスへの依存度の高さから、ウクライナでの戦争の悪影響を最も強く受ける国の一つになるとみられていました。同時に中国の情勢は、ゼロコロナ政策とそれによって同国の多くのセクターが低迷したために、予断を許さない状況になっていました。このような環境では、エコノミストに希望を与える材料はほとんどありませんでした。さらに、サプライチェーン問題やエネルギー価格の高騰を背景にインフレが大幅に加速したことも大きな問題でした。したがって、今回の株価の好調ぶりは、いつものごとく、いくつかの大きな上振れサプライズによるものといえます。そもそもユーロ圏では、エネルギー価格、特に天然ガスの価格が最近大幅に下落しています(「今週のチャート」参照)。一方ドイツ株は、ウクライナでの戦争によりドイツ企業の株が大きく値下がりするとみた国際投資家に売られた結果、2022年秋には非常に割安な水準に下落していました。同様に、中国は、重要な経済地域における日常生活と産業のあらゆる分野が異様な、ほぼ完全な麻痺状態に陥っていました。
その結果、年初に2つの大きなサプライズが同時に起こりました。ドイツは、経済省の取り組みと好天に助けられ、天然ガス危機を非常にうまく切り抜けています。そして中国は、最近の春節休暇が示すように、急速かつ全般的な経済活動再開とコロナ政策の緩和によって市場を驚かせています。
これからは、現実に直面しなければなりません。こうした好ましいサプライズは、持続可能な上昇につながるでしょうか。それともインフレ懸念を受けて、主要な中央銀行が利上げを実施し、経済活動を冷え込ませることで、安心感はあっという間に薄れるのでしょうか。全ての中央銀行理事会のメンバーのスピーチやインタビューが注目され、一言一句が慎重に解釈され、欧州と米国のインフレに関するコメントの一つ一つが、悲観的な調子を含んでいないかチェックされるでしょう。
しかし、一筋の希望があります。2023年中にリセッション入りする見込みに関してバンク・オブ・アメリカが機関投資家を対象に行った最近の調査は、用心しつつも懸念が和らいでいることを示唆しています。懐疑的な見方をする割合は、過去最高を記録した2022年秋からやや低下し、悲観的な予想が強まる一方だった傾向にピリオドが打たれたように思われます。
欧州の天然ガス価格(逆換算)とドイツ株価指数(DAX)の相対的なパフォーマンス
来週を考える
こうした世界情勢の中、いよいよ来週、米国、ユーロ圏、英国で中央銀行会合が開かれ、今年最初の中央銀行の政策決定が行われます。
早期の政策転換はおそらくリスクが大きすぎるため、会合では12月の記者会見で発表された抑制的な政策が確認されると弊社はみています。
さらに、ユーロ圏全体と主要各国の新しいインフレ率も発表される予定です。弊社では、インフレがさらに減速するとみています。エネルギー価格の上昇が弱まっているため、前年同月比の消費者物価上昇率は押し下げられるはずです。しかし、この減速は、欧州中央銀行(ECB)を方針転換に踏み切らせるほど大きなものではないと思われます。
ユーロ圏全体とドイツの失業率も注目に値します。おそらく、比較的堅調な数字になるでしょう。これは、米国にも当てはまります。米国では、堅調な労働市場が消費を支えており、米国連邦準備理事会(FRB)が物価安定と完全雇用という二つの使命に基づいて、より抑制的な政策を追求することを可能にしています。
1月のユーロ圏のセンチメント指標と米国・中国の購買担当者景気指数(PMI)が出れば、全体像が明らかになります。それに加えて、2022年第4四半期のユーロ圏における国内総生産(GDP)成長率の推計値も発表されます。主要な指標はだいたい来週中に出そろう予定です。消費者信頼感指標がさらに改善すれば、株式市場の上昇が続くかもしれません。
堅調な1週間となりますように。