規律と分散

新年を迎えると、多くの人がその年の抱負を掲げます。よく聞かれるのが、「もっと運動する」「食生活を改善する」「健康的な生活を心がける」などです。健康に良いことは、資本市場への投資にも通じるところがあります。2026年に賢明な投資を行うには、短期的なトレンドを追いかけるのではなく、規律ある分散投資に重点を置くのがよいでしょう。

世界のマクロ経済環境を客観的に評価すると、世界経済はおおむね潜在成長率に沿って拡大する見通しです。これは特に、依然として圧倒的な経済大国である米国に当てはまります。ユーロ圏と日本では、主に拡張的な財政政策に支えられ、潜在成長率をやや上回る水準で推移すると予想されます。中国では、経済の勢いが徐々に減速する傾向が続くとみられるものの、年初にはここ数カ月よりもやや強めの景気刺激策が講じられる可能性があります。

投資家にとって、このようなマクロ経済環境はこれからの1年において企業収益がプラス成長を遂げ、リスクプレミアムを獲得する機会も生まれる土台となる可能性があります。ここ数年、投資家はより大きな不確実性に直面していました。政治的リスクは相変わらず高いものの、貿易政策、関税、地政学的緊張をめぐる不確実性の一部は徐々に後退すると考えるに足る理由があります(もっとも、最近の米国によるベネズエラへの介入は、逆の方向を示しているように見えるでしょうが)。2026年11月6日に行われる米国の中間選挙を除けば、主要先進国で大規模な国政選挙は予定されていません。ただし欧州では、ドイツのいくつかの州議会選挙がある程度注目を集めるかもしれません。

言うまでもなく、極めて重要なのは上振れリスクと下振れリスクを見失わないことです。特に米国では、想定されるシナリオの幅が広がっています。最良のシナリオでは、投資が生産性の急速な向上につながり、力強い成長とインフレ低下の両立を可能にするでしょう。あるいは、より緩和的な金融政策スタンスが取られれば、インフレが高止まりする期間が長引くという代償はあるものの、当初は米国の中間選挙に先立って経済活動と株式市場に押し上げ効果をもたらす可能性があります。あまり好ましくないシナリオは、労働市場の急速な冷え込みをきっかけに解雇が増え、個人消費を圧迫して最終的に景気減速を引き起こすというものです。欧州では、ドイツの景気刺激策が行方を左右するかもしれません。経験則として、投資プログラムの規模が大きく、効果的に実施されるほど、成長への影響は大きくなります。その逆もまた然りです。この点で、市場の期待は最近やや抑制的になっています。

こうした不確実要因を考えると、分散投資は賢明な選択と言えるでしょう。幅広い資産クラスに配分することで、ポートフォリオはさまざまなシナリオに対応できるようになります。ベースラインシナリオでは、株式は堅調なリターンを生み出せる状況にあり、ポジティブなシナリオでは、さらに大きなリターンをもたらす可能性があります。国債は景気後退局面でポートフォリオを安定させるのに役立ち、金や銅などの商品に対する需要は、インフレが予想以上に上昇した場合、旺盛な状態が続くでしょう。

ここで取り上げたいのが、人工知能(AI)という大きなテーマです。AIは資本市場に極めて大きな影響を与えており、その影響は2026年も持続するとみられます。資本市場の成長の中心となる可能性を秘めたこの領域こそ、規律と分散の組み合わせが真価を発揮するはずです。AI関連セグメントにおける過熱についての賛否を見極めるには、継続的かつ緻密な分析が必要となります。長期的に見ると、この収益ポテンシャルに十分投資しなかった場合の機会損失は高くつきかねませんが、過度の集中リスクも無視できません。投資機会はさらに広いエコシステムへと広がりつつあり、その中にはコンピューティング能力、エネルギー、実現技術に対するさらなる需要を喚起しそうな用途も含まれます。ここで求められるのは、AIのさまざまなセグメントや方向性、地理的地域、エネルギーやインフラといった隣接するイノベーション分野まで幅広く包含する分散投資です。

年明けの環境を踏まえると、次のような株式と債券への戦術的な配分が考えられます。

  • 現在の経済環境を考えると、地域別・セクター別に幅広く分散した株式をオーバーウェイトにすることが推奨されます。
  • 2026年の米国株式市場については、金融政策による景気の刺激から場当たり的な経済政策による景気後退まで、幅広いシナリオが想定されます。高いバリュエーションを考え合わせると、より魅力的なリスク・リターンプロファイルを求めて、他の市場に目を向ける価値があるかもしれません。とはいえ、リスクが明確に見えてこない限り、米国市場への投資を維持することが賢明と言えます。
  • これに対し、欧州株式の見通しはそれほど不安定でないように思われます。目覚ましい成長の可能性は低いものの、欧州大陸が進めている政治的・デジタル主権の達成に向けた取り組みを追い風に、引き続き豊富な投資機会が期待できます。ドイツ政府の経済刺激策に対する期待が後退したことで、ポジティブサプライズのハードルは低くなっています。
  • 新興国の株式市場——投資家のエクスポージャーはまだ少ない——は、健全な経済成長(特に中国以外)、有利な金融・通貨環境、企業収益の上方修正、そして魅力的なバリュエーションといった好条件が揃っています。韓国や台湾などの市場は、テクノロジー株ブームの恩恵を受けており、インドなどの市場は依然として強固なファンダメンタルズを誇っています。中南米は金属価格の上昇から受ける恩恵が増すと思われますが、短期的にはベネズエラでの出来事を受けて、見通しは不透明です。
  • 債券市場ではボラティリティが継続しており、政治情勢が引き続き取引に影響を及ぼしています。日本では、政府が景気刺激に重点を置いた政策を発表した後、10年債利回りが2%の節目を突破しました。中期的には、これにより日本から他の債券市場への資本流出が減少する可能性があります。欧州でも、利回りは近年と比較するとまだ高止まりしているものの、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げにより、米国債利回りは緩やかに低下しています。全体として、国債市場はショックに対して脆弱な状態が続いていますが、不利な経済シナリオではポートフォリオを安定させるのに役立つ可能性があります。さらに、国債の実質リターンは再び、概ねプラスを回復する見込みです。

  • 新興国市場の現地通貨建て債券は、高い実質金利、通貨高、健全な財政状況がプラスに働くと思われます。リスクを取る余地のある投資家にとって、ハードカレンシー建ての新興国債券は、ポートフォリオに加える価値のある選択肢となるかもしれません。
  • 年間を通じて、米ドルはさらに下落する可能性があります。世界の基軸通貨であるドルのパフォーマンスに影響する次の決定的な要因は、次期FRB議長の選任でしょう。
  • 商品に関しては、金属に注目すべきです。貴金属に対する需要は中期的に高い水準を維持すると見られます。特に銅は、需給バランスが魅力的な状態となっています。

今週のチャート
企業業績は底堅く、多くの地域で業績予想は引き上げられる傾向にあります。

出所:LSEG Datastream, AllianzGI Global Capital Markets & Thematic Research、2026年1月5日時点。

過去の実績や予測、予想、見込みは将来の実績を示すものではなく、また、将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。

投資テーマ:欧州の自律
  • 欧州は、戦略的自律を強化しつつあり、未来志向のセクターに資本を投入しています。
  • 地政学的再編を受け、「準備2030」や「グリーンディール」といった取り組みを通じて大規模な公共投資が進んでいます。
  • これらのプログラムはともに、国防、インフラ、グリーン技術への的を絞った投資を動員しています。
  • 欧州のイノベーション・エコシステムを促進するこれらの措置は、域内の成長ポテンシャルを高め、欧州企業を下支えするのに寄与するでしょう。
  • 技術革新、特に中小型企業によるイノベーションが、エネルギー、インフラ、バイオテクノロジー、サイバーセキュリティの発展をけん引しています。
  • 投資テーマとして、欧州の戦略的自律はグローバルに分散投資を行っている投資家にとって集中リスクを軽減するのに役立つかもしれません。グローバルベンチマーク指数では、米国株、なかでもテクノロジー銘柄の組み入れ比率が高いために、集中リスクが目立っています。

2026年も皆様の投資が順調でありますように。

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