生成AIの台頭が投資家に意味すること
チャットGPTやDALL-E2(ダリ・ツー)のような生成AIの進化は、投資家にとってどのような意味合いを持つのでしょうか。
要約
- チャットGPTとDALLE-2の登場により、生成AIに注目が集まっています。
- 根底にあるGPT技術は急速に成長しており、さまざまなセクターや産業で実用的なユースケースが考えられます。
- 生成AIは、徐々にではあるものの、破壊的イノベーションになると予想されます。
「生成AIは転換点にあり、キャズムを超えようとしている。このような魔法が起こるのを一般の人々が広く目の当たりにするのは初めてのことだ。私は、このコンセプトについて極めて強気な見方をしている。(中略)みなが口を揃えて、AIはもう流行らない、これからはブロックチェーンと暗号資産だと言っていたが、いまやAIが加速し、それ以外が凋落している。これからの数年間、とても面白いものが次々と出てくると思う1」
ダニー・ラング、ユニティAI担当シニアバイスプレジデント
ニュース:マイクロソフトは、チャットGPTの開発元である評価額約290億米ドルのスタートアップOpenAIに数十億ドル規模の投資を行う予定。
人工知能(AI)関連の最新のトップニュースは、マイクロソフトによるOpenAIへの追加投資でしたが、他の生成AIアプリケーションも世間の注目を集めています。これまでとの違いは、このテクノロジーにはすぐに応用できる用途が数多くあることと、投資家にとって幅広い意味合いを持つことです。
生成AIとは何か?
生成AIとは、「深層学習」という、機械学習(ML)の一形態を指す包括的な用語です。この種のAIは、データセットで学習させたマシンを使って、人間の指示がなくても特定のタスクを実行したり予測を立てたりすることができ、最近、その学習方法が目覚ましい技術的発展を遂げています。初期のMLモデルは、大半が「教師あり学習」をベースにしていました。教師あり学習では、ある画像を「犬」と識別したりソーシャルメディアへの投稿を「政治的」と識別したりといったデータの分類に、人間の手を借りる必要があります。最近の生成AIの発展に関わっているのは、「教師なし学習」です。教師なし学習では、投入された膨大な量のデータに基づいてMLモデルが自身で予測や計算を実行します。
今日のマシンは、画像の中の犬を識別できる段階から、犬の画像を作成できる段階へと進化しています。DALL-Eと呼ばれる技術は、説明的な言葉に基づいて絵を描くことができ、Chat Generative Pre-trained Transformer(チャットGPT)は、いくつかのプロンプト(命令文)に基づいて経済解説やコンピューターコードさえ書くことができます。確かに、チャットGPTとDALL-Eの機能やユーザーインターフェースに注目に値しますが、その基礎となる技術は何年も前に登場しており、現在急速に向上しつつあります。2018年以降、メタ・プラットフォームズやマイクロソフト、グーグルなどによって独自あるいはオープンソースの高度なGPTモデルが作成されています。
なぜ投資家にとって重要なのか
チャットGPTは、大規模言語モデル(LLM)の一例であり、要は文章やコード行を書くといった特定のタスクを実行するために膨大なテキストデータで学習したソフトウェアです。LLMには数十億個の変数(パラメーター)が含まれており、学習を重ねるにつれ、それらの変数を変えることができます。結果として精度が上がると、ビジネスにおけるユースケースも増えます。たとえば、AIを利用したチャットボットは、バンキング顧客からの質問の9割に回答できるかもしれません。そうして従業員の負担を減らすことで、サービスの販売に費やす時間を増やしたり、銀行にとって最も価値のある顧客の対面エクスペリエンスの向上を図ったりすることが可能になります。
この種のテクノロジーを応用できる場面は、いろいろ考えられます。簡単な商品紹介から技術マニュアル、さらには「保険料率が上がった理由」に対する回答まで、書面の資料を必要とする企業は、人間よりも早く、安く資料を作成できるようになります。コーディングに生成AI技術を生かすことで、プログラマーは、非常に時間のかかる基本的かつ定型的なコーディング作業から解放され、より重要で、より高い付加価値をもたらすプログラミング作業に専念できるようになります。
生成AIは、テキスト以外に、画像や音声、動画などの生成にも利用できます。ロゴのデザイン、背景の描画、製品の設計といった、時間のかかる人間の作業を補助し、人間に取って代わることも考えられます。こうしたモデルはいずれ、ゲーム、視覚的なインタラクティブ・エンターテイメント、「デジタルツイン」等のビジネスシミュレーションにおいて、次世代の拡張現実(AR)や仮想現実(VR)関連の技術と統合されるでしょう。有名女優が自分の画像の使用許諾をプロダクションに与え、プロダクションが生成AIモデルを使ってその女優が実際に演技をしているような広告を制作することも、近いうちに可能になるかもしれません。
倫理・規制上の問題
チャットGPTをはじめ、あらゆるAI関連技術は、AIが作成した画像の著作権とライセンスの問題といった、重要な倫理的問題を提起しています。また、チャットGPTはインターネット全体を学習セットとして使用するため、間違った回答や整合性のない回答、あるいは不適切な回答をすることもあります。特定のユースケースでこの技術を利用する企業にとっては、このことはあまり問題にならず、より目的に特化したデータセットと微調整によってマシンにさらに学習させることができます。しかし、特にソーシャルメディア企業にとっては、こうした問題は深刻です。
新しいテクノロジーが登場する度に幾度となく目にしてきたことですが、アプリケーションや用途が先に導入され、規制は後追いで対応しなければなりません。OpenAIは、チャットGPTをまず広く一般用に公開することで、ユーザーからのリアルタイムのフィードバックによってモデルをより効果的に学習させられると期待しています。2022年11月のリリース後、OpenAIのチャットGPTツールを利用するために登録したユーザーの数は、最初の5日間で100万人を超えました2。
生成AIに対してアリアンツGIが取っているポジション
生成AI技術そのものは数十年前から存在していますが、チャットGPTやDALL-Eのようなアプリケーションは、特に教師なしMLと深層学習のアプリケーションの分野において画期的なものです。この種のAI主導の変革というテーマにおいて、アリアンツ・グローバルAI戦略は、AIインフラ、AIアプリケーション、AI利用産業にわたり、生成AIに幅広く分散的なエクスポージャーを取ることを目指しています。
結論
生成AIの未来は、急速に進化していくと予想されます。生成されるコンテンツの質と多様性が向上し、新しいタイプの生成モデルが登場し、ヘルスケアや金融、輸送といったさまざまな業界において広く応用されるようになるでしょう。さらに、使いやすいインターフェースやツールによって、より多くのユーザーがAIにアクセスできるようになると思われます。生成AIの未来を正確に予測することは難しいものの、弊社では、生成AIが今後、AIを活用した変革とイノベーションの重要な一部になると楽観しています。
今日のチャート:生成AI市場は今後10年にわたり年率27%で成長する可能性がある
1 Unity’s AI Chief on Generative AI, Metaverse and Gaming, aibusiness.com, December 20, 2022.
2 “What is Generative AI”, McKinsey and Company, 19 January 2023