米連邦準備制度理事会&欧州中央銀行理事会
1月の会合でFRBは金利据え置き、ECBは利下げサイクル継続の見通し
1月28-29日と30日のそれぞれの会合において、米連邦準備制度理事会(FRB)は金利を据え置き、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標レンジ4.25%〜4.50%を維持する一方、欧州中央銀行(ECB)は預金ファシリティ金利を25bp引き下げて2.75%にするものと予想します。
要点
- 1月28-29日と30日のそれぞれの会合において、米連邦準備制度理事会(FRB)は金利を据え置き、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標レンジ4.25%〜4.50%を維持する一方、欧州中央銀行(ECB)は預金ファシリティ金利を25bp引き下げて2.75%にするものと予想します。
- FRBが2024年9月に利下げサイクルを開始して以降、米国の経済データは比較的明るさを保つ一方、欧州の経済成長データは低迷し、同地域が直面する循環的かつ構造的な逆風に引き続き注目が集まっています。
- トランプ政権の貿易政策への影響も、米国と欧州の経済成長が相対的に乖離していくとの見通しを一層強めています。
- 2025年の最初の数カ月間、FRBは政策スタンスについてECBよりも慎重な姿勢を維持するものと考えます。
- すでに市場のプライシングは、FRBの今後の政策見通しにおけるハト派色後退を反映して変化し、2025年前半における利下げはわずか1回しか織り込まれていません。ECBに関しては、同期間に少なくとも3回の利下げが織り込まれています。両経済圏における相対的な成長とインフレの期待を考慮すれば、この市場のプライシングは現時点では合理的であろうと弊社は考えます。
- しかし、米国の実質金利や債券の期間プレミアムが一段と上昇すれば、金融環境が十分に引き締まるとともに、今年の米国経済への高い成長期待も幾分緩和され、再びFRBが動けるようになる可能性があります。ユーロ圏でも同様に、貿易摩擦が激化すれば、ECBは現在織り込まれているよりも迅速かつ大幅な利下げの実施に至る可能性があります。
- 現状の市場環境は、米国およびドイツにおけるイールドカーブのスティープ化取引に有利に働くと考えます。デュレーションのエクスポージャーは、より優れたリスク・リワードが得られる国(主にヨーロッパ)が中心となります。このような環境において、弊社は米国のデュレーションを短期化する戦術的スタンスを選好するとともに、2025年の米国の潜在的なインフレリスクも踏まえ、米国のインフレ・プロテクションの保有も考えます。
FOMCとECB理事会(1月28日-29日と1月30日)の見通し
米国で新政権が発足する中、米国経済は比較的良好な状態にあります。失業率はわずか4.1%で、労働市場が急激に悪化する兆しはほとんどありません。一方、市場のコンセンサスは、成長促進を掲げるトランプ大統領の政策アジェンダを裏付けに、今年の米国の見通しに関して比較的強気であり、2025年の経済成長率を2.2%(2024年は2.8%)と予測しています。しかし、インフレの背景はより複雑です。インフレ圧力は弱まりつつありますが、FRBが重視するコアPCEのインフレ指標は前年比2.8%1、依然として目標を上回っています。このため、FRBはより慎重な政策スタンスを維持する意向のもと、短期的には金利を据え置き、成長とインフレに関する今後のデータを見極めるものと考えます。
ユーロ圏の状況は異なり、経済成長率は2024年の0.7%に対して2025年は1%と予測されています。ユーロ圏主要国は、引き続き循環的かつ構造的な逆風に直面しており、将来の貿易に対する不確実性と関税リスクもユーロ圏に成長下振れリスクをもたらしています。インフレ面では、広範なディスインフレのシナリオは健在で、ユーロ圏の総合CPIは前年同月比2.4%の上昇、コアCPIは前年同月比2.7%の上昇でした。2月下旬に行われるドイツ連邦議会選挙の結果が待たれる中、短期的には、ユーロ圏が直面する構造的な課題、貿易面の不確実性、政治の行き詰まりなどが、2025年の欧州の見通しにかなり暗い影を投げかけています。一方、明るい兆しとしては、ユーロ圏の金融環境の緩和が挙げられますが、これはECBによる抑制的な政策スタンスが早期に解除されるとの期待やユーロ安が背景にあります。また、ドイツ総選挙後の債務ブレーキ改革の見通しは、ユーロ圏が直面する下振れリスクの軽減に役立つ可能性があります。ECBの政策に関して、短期的な利下げの道筋は明確であり、短期金利市場は今後数カ月における複数回の利下げを十分に織り込んでいます。
戦略の観点からは、米国とドイツは期間プレミアムがまだ低すぎると考えられるため、イールドカーブのスティープ化取引を選好します。デュレーションのエクスポージャーは、より優れたリスク・リワードが得られる国、緩やかな利下げサイクルを足元で織り込んでいる市場、実質利回りに相対的な妙味がある市場が中心となります。このような環境において、弊社は米国のデュレーションを短期化する戦術的なスタンスを選好します。また、米国の金融政策および財政政策のスタンスや、米国の関税および移民政策から生じる潜在的なインフレ上昇リスクを踏まえ、米国のインフレ・プロテクションの保有も考えます。
1. 出所:ブルームバーグ(2025年1月22日現在)