欧州中央銀行理事会
ECBが利下げに慎重姿勢で臨むと予想する理由
1月25日のECB理事会に先立ち、アリアンツGIの債券部門グローバルCIOを務めるフォンク・ディクスミエがコメントします
要点
- インフレ率がまだ2%の物価安定目標への確かな道筋をたどっていないことを踏まえると、欧州中央銀行(ECB)は初回の利下げに対する慎重なアプローチを再確認すると予想する
- 12月のコアインフレは依然として前年比3.4%上昇しており、本年は賃金上昇によるインフレ圧力がさらに高まる可能性がある中で、インフレとの闘いはまだ勝利とは言えない
- たとえ長期金利の上昇余地は限定的であっても、ECBの慎重な姿勢は、足元の債券利回りの調整に拍車をかけるものと考える
ECB理事会(1月25日)の見通し
2023年末、米連邦準備制度理事会(FRB)とECBの利上げ局面は終了したと市場が認識し、投資家の間で中央銀行による利下げが迫っているとの確信が高まり、債券相場の上昇が加速しました。こうした期待がピークに達した12月末時点で、市場はECBが2024年に25ベーシスポイント(bp)の利下げを7回強にわたり実施すると予測していました。また、投資家は2024年3月に初回の利下げが行われる確率を72%と見込んでいました1。
それ以降、複数のECB理事会メンバーが、投資家の予想よりも利下げのタイムテーブルを長くすることを主張してきました。その顔ぶれは、政策理事会のロバート・ホルツマンやヨアヒム・ナーゲルといったタカ派色の強い理事から、より穏健なチーフエコノミストのフィリップ・レーンにまで及んでいます。このような度重なる警告は、市場の期待を抑えるのに役立っています。しかし、期待はまだ高い水準にあります。1月19日時点で、市場はほぼ6回の利下げ実施を予測し、4月に初回の利下げが行われる確率を80%と見ていました2。
弊社は、1月の理事会ではECBの慎重な姿勢が再確認されるものと予想します。ECBは、インフレ率が持続的に2%の物価安定目標水準に戻ると完全に確信できる場合にのみ利下げ局面に入ることを、改めて表明するものと考えられます。
しかし、以下のようにまだそこまでに至っていません。
- 消費者物価は11月に前年比+2.4%と底を付けた後、12月には+2.9%と加速しました。
- 12月のコアインフレは依然として前年比3.4%上昇しています3。
また、以下のようなアップサイドリスクが残ります。
- 2023年のユーロ圏の賃金上昇率は5%を上回りましたが、本年も引き続き賃金は上昇しそうです。
- 特に紅海における地政学的緊張、そして海上交通の障害から生じる追加コスト。
投資家の債券への買い意欲が非常に強いため長期金利の上昇余地は依然として限定的だとしても、ECBが非常に慎重な姿勢をとっているという認識は、足元の債券利回りの調整に拍車をかけるものと考えられます。債券への投資意欲は、年初の新規発行債券に対する旺盛な需要に見られます。弊社は、12月の相場上昇局面でデュレーションのエクスポージャーを減らし、ユーロ金利のポジションを中立に戻しました。その後は、市場が弱含む局面を捉えてデュレーションを追加しています。
1. Bloomberg, 27 December 2023
2. Bloomberg, 19 January 2024
3. Eurostat, January 2024