日銀政策決定会合
金融政策調整に動く可能性
日銀が今後3カ月以内に金融政策の調整に動く可能性が高まっています。
要点
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日本銀行(以下、日銀)は、非伝統的金融政策からの脱却を目指し、3月にも政策枠組みの調整に着手する可能性が高いが、4月になる可能性も捨てきれない
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最近の報道によれば、経済動向は政策の修正を可能にするほど十分に強固であるとの確信が日銀内で高まっている
日銀政策決定会合(3月18‐19日)の見通し
この後に予定されるいずれかの日銀金融政策決定会合において、日銀が金融政策を修正するとの憶測が飛び交っています。非伝統的な金融政策手段の一部撤廃が、おそらく近いうちにあり得ることには、弊社も同意します。ただし、期待のしすぎは禁物です。日本経済は、テクニカルな景気後退をGDPの上方修正1でかろうじて回避しているほか、長期にわたる家計の実質所得の減少を受け国内消費は引き続き低迷しており、足元では若干脆弱な状況が続いています。このような背景から、どのような政策調整も段階的に行われる可能性が高いと見られます。また、日銀は、早すぎる(そして度重なる)介入が景気減速につながった過去の教訓からも確実に学んでいます。
非伝統的な政策手段の見直し対象には、例えば、イールドカーブ・コントロール(YCC)、マイナス金利政策(NIRP)、3層構造の日銀当座預金制度、ETF買い入れプログラム、債券買い入れプログラムなどがあります。YCCとNIRPはともに撤廃される可能性が高いものの、この見直しに伴い、円滑な移行と長期金利の急激な変動の抑制を目的に、債券買い入れは継続されるものと見られます。日銀は、以前のコミュニケーションにおいて、突然の混乱が生じないよう徐々に移行することを目指すと強調しています。それ以上の利上げはかなりデータ頼りとならざるを得ず不確実なため、弊社は日銀が即座に引き締めサイクルに転じることも現時点では予想していません。
調整の着手時期について、弊社は3月の可能性が高いと見ます。しかし、依然として不確実性が大きいことは認識しています。当初の政策調整が市場への影響を抑制する内容になるであろうことを市場は足元でほぼ織り込んでいることから、日銀にはチャンスがあります。また、ディスインフレの進行や各国中央銀行の行動に先を越されることなどでミッションが複雑化する前に、正常化を進めたいと日銀が考えている可能性もあります。たとえ3月に日銀が動かなかった場合でも、4月の会合までに市場変動を回避するための今後の道筋について指針を示す可能性が高く、そのため、市場の反応は日銀の動きと非常に似たものになるかもしれません。公表までに時間が必要な中小企業の賃金協定データを日銀が見極めたいと考えることは、3月の調整着手にとって最大のリスクです。
日銀と米連邦準備制度理事会(FRB)が待望する政策ドライバーが、今後数カ月でより明確に展開されるはずであることから、弊社はポジショニングを維持します。政策調整の実施が1カ月早いか遅いかの問題は、全体的な軌道が変わらない限り、あまり影響を及ぼしません。弊社は日本国債に対して慎重な見方を、円相場に対してやや積極的なスタンスを、それぞれ維持します。円高や最近の投資家のフローにより、日本株は短期的に下落する可能性があります。一方、日銀の慎重な引き締め姿勢が、依然として魅力的なバリュエーションおよび収益動向と相まって、中期的に日本株に有利に働き続けるはずです。
1.Cabinet Office, Government of Japan - Economic and Social Research Institute, March 2024 Quarterly Estimates of GDP : Economic and Social Research Institute - Cabinet Office Home Page (cao.go.jp)