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蓄電池:エナジートランジション実現の鍵

蓄電市場への投資が、送電網の制約解消、再生可能エネルギーの活用拡大、そしてインフラにおける投資機会の創出にどのように貢献するかを解説します。

主なポイント
  • バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)は、再生可能エネルギーの供給と電力需要のバランスを調整する役割を果たし、エナジートランジションを支える重要なインフラとなりつつあります。
  • BESSは、電力系統の安定性向上、送電網の混雑緩和、再生可能エネルギーの出力抑制の削減、既存の電力インフラの有効活用に貢献します。
  • 世界および欧州の蓄電市場は急速に拡大しています。電化の進展、デジタル化、電力需要の増加、化石燃料発電の段階的削減、さらにはエネルギー市場の価格変動拡大が成長を後押ししています。
  • インフラ投資家にとって、蓄電池はエナジートランジションに関連する成長分野への投資機会を提供します。一方で、市場リスク、テクノロジーリスク、オペレーションリスクについては慎重な管理が求められます。
  • 長期のオフテイク契約(利用料保証や最低収益保証を含む契約)は収益の予見性向上に寄与しますが、契約構造や関連リスクの十分な管理が不可欠です。

エナジートランジションは、主に以下の3つの市場セグメントに分けて考えることができます。

上流(Upstream):再生可能エネルギーの発電・生産

中流(Midstream):蓄電、送電、配電

下流(Downstream):電力消費

過去10~15年にわたり、エナジートランジションに関連する投資は主に上流分野、すなわち再生可能エネルギーの発電能力拡大に向けられてきました。しかし、世界のエナジートランジションは新たな段階に入っています。課題はもはやより多くのグリーン電力を生み出すことだけではなく、送電網の容量不足や電力システムの柔軟性の確保、変動する再生可能エネルギーの需給バランスの調整などが大きなボトルネックとなっています。

こうした中、BESSは最も重要な解決策の一つとして注目されており、現在、電力関連技術の中で最も急速に成長している分野となっています¹。

欧州、北米、アジア太平洋地域で再生可能エネルギーの導入が進むにつれ、電力システムそのものも大きく変化しています。太陽光発電や風力発電は出力変動が大きく、発電量と電力需要のタイミングが一致しないことが少なくありません。その結果、送電網の混雑や再生可能エネルギーの出力抑制、さらには電力価格や需給の変動性拡大につながる可能性があります。特に、既存の電力インフラはこうした大規模な再生可能エネルギーの導入を前提として設計されておらず、整備のスピードも十分とはいえません。

同時に、電化の進展やデジタル化の加速、AI関連データセンターの急速な拡大によって電力需要は増加しており、電力システムへの負荷は一段と高まっています。そのため、柔軟に電力を供給・調整できる蓄電設備の必要性はますます強まっています。

今後のエナジートランジションの成否を左右するのは、再生可能エネルギーをどれだけ発電できるかだけではありません。むしろ、発電した電力を効率的に蓄え、輸送し、管理できるかが重要なポイントになるでしょう。

電力の需給調整の補完

BESSは余剰電力を蓄え、需要が高まる局面で放電することで、発電と消費のギャップを埋める役割を果たします。これにより、電力系統の柔軟性向上や安定性の強化、再生可能エネルギーの導入拡大を支援します。その結果、蓄電システムは現代のエネルギーインフラに不可欠な構成要素となりつつあります。

アリアンツGIは今年、TotalEnergiesとのドイツの蓄電池事業合弁会社への大型出資に加え、ドイツの蓄電池プラットフォームであるGESIにも出資しました。これらの投資は、機関投資家向けインフラポートフォリオにおける蓄電市場への投資の重要性が高まっていることを示しています。

国際エネルギー機関(IEA)によると、2025年に世界で導入された新規蓄電容量は108GWに達し、2024年比で40%増加しました²。欧州では、2025年の新規導入容量が36GWhとなり、前年比48%の大幅な伸びを記録しています³。

世界の蓄電貯蔵新規導入容量(2020~2025年)

再生可能エネルギーの導入拡大、電化の進展、デジタル化、そして電力市場のボラティリティ上昇を背景に、バッテリー蓄電の重要性は一段と高まっています。SolarPower Europeは、中位シナリオにおいて、欧州の蓄電貯蔵累積導入容量が現在の100GWh強から2030年までに約580GWhへと6倍超に拡大すると予測しています。

送電網の増強は引き続き不可欠ですが、蓄電池は競争力のあるコストで電力システムの柔軟性を高めることができる、最も迅速に導入可能なソリューションの一つです。蓄電池プロジェクトは通常2〜4年で開発から運転開始まで進めることが可能です。そのため、多くの市場では大規模な送電インフラ整備が完了するよりも数年前に蓄電設備を稼働させることができ、長期的なインフラ投資が進むなかで、短期的な電力系統のボトルネック解消に貢献することが期待されています。

出所:Technology: Battery storage – Global Energy Review 2026 – Analysis – IEA。過去の実績や予測、予想、見込みは将来の実績を示唆・保障するものではありません。

蓄電市場への投資

蓄電市場の成熟を後押ししている要因として、電池コストの低下、技術性能の向上、金融機関による理解の深化、そしてより高度な市場取引スキームへの発展が挙げられます。こうした環境変化を背景に、エクイティ投資とデット投資の双方において、機関投資家の参入が拡大しています。

機関投資家にとって、蓄電池は長期的な構造的成長テーマへの投資機会と、インフラ資産としての特性を兼ね備えた魅力的なリスク・リターン特性を提供します。収益構造によっては、契約に基づく安定的なキャッシュフローによって下方リスクを抑制しながら、電力市場や需給調整市場の成長によるアップサイドも享受することが可能です。一方で、規制された送配電事業とは異なり、蓄電関連資産は競争的な電力市場で運用されることが一般的です。そのため、高い収益機会が期待できる反面、市場リスク、テクノロジーリスク、オペレーションリスクを適切に管理することが重要となります。

また、BESSへの投資は、より機関投資家向けの資産クラスへと発展しています。電力会社、エネルギートレーダー、電力を大量に消費する企業との長期オフテイク契約は、収益の予見性を高めながら市場価格上昇による恩恵を一定程度享受することを可能にします。長期契約に基づく収益と市場収益の構成比によっては、蓄電関連資産は「コア・インフラ」と「コアプラス・インフラ」の中間的な特性を持つ資産とも位置付けられます。ただし、すべての案件が同等の投資機会というわけではなく、規制環境、開発段階、資金調達スキーム、市場アクセス戦略、資産特性、契約上の保護条項などを包括的に評価する専門性が不可欠です。

蓄電市場への投資は、エネルギーインフラ投資の自然な進化形ともいえます。多くの国・地域では、送電網容量の不足や長期化する接続待機期間が再生可能エネルギーの普及拡大の足枷となっています。蓄電池は余剰電力の吸収、送電網の混雑緩和、既存インフラの利用効率向上に貢献し、エナジートランジションを支える重要なインフラとしての役割を担っています。

アリアンツGIでは、複数の業界レポートが示すとおり、BESS市場の成長は今後も継続すると考えています。当社は今年、米国における複数の太陽光発電・蓄電池プロジェクトへの融資を実施しました。今後の市場発展は、太陽光+蓄電池や風力+蓄電池といったハイブリッド型プロジェクトへと重点が移ると見込まれています。また、データセンター、AIの利用、電動輸送手段の拡大による電力需要の増加は柔軟な電力供給への需要を一段と高めています。

エナジートランジションは、もはやクリーンな電力を増やすことだけが目的ではありません。再生可能エネルギーが効率的かつ安定的に機能するために必要なインフラを構築することが、ますます重要になっています。再生可能エネルギーの普及が進むにつれて、電力供給の柔軟性の価値は高まり、蓄電貯蔵は今後のエネルギーシステムにおいて不可欠な存在になると考えられます。

データで見る蓄電池市場
  • アリアンツGIは、20年以上にわたりインフラ投資を手掛けています。
  • 2025年には世界で108GWの新たな蓄電池ストレージ容量が導入されました。累積導入容量は2021年比で約11倍に拡大しています²。
  • 再生可能エネルギーの導入拡大を支えるためには、2030年までに世界の蓄電容量を約6倍の1,500GWへ拡大する必要があるとされています²。
  • IEAの「2050年ネットゼロ排出(NZE)シナリオ」では、エネルギー貯蔵容量の増加分の約90%を蓄電池が占めると見込まれています⁴。
  • 大規模蓄電池プロジェクトは、通常2~4年程度で開発から運転開始まで進めることが可能です。
アリアンツGIの主な投資事例
  • TotalEnergiesとの共同事業:
    ドイツでTotalEnergiesと提携し、約800MW規模・11件の蓄電池プロジェクトからなるポートフォリオの50%持分を取得しました。 これらのプロジェクトは、送電網の混雑緩和を通じてドイツの電力システムの安定性向上に貢献しています。
  • EsVolta:
    米国の蓄電池事業者EsVoltaの蓄電池ポートフォリオ拡大に向けた資金提供を実施しました。これにより、電力系統の安定化や再生可能エネルギーの導入拡大を支える重要なインフラ整備を支援しています。
  • GESI:
    ドイツの蓄電池プラットフォームであるGESIの51%持分を取得しました。 GESIは、大規模蓄電池システムの開発・建設・運営を行い、エネルギーシステムに必要な柔軟性の提供を担っています。

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