Embracing Disruption

セマティカ戦略におけるテーマ横断的な推進力としての人工知能

オープンAIが2022年末にチャットGPT大規模言語モデル(large language model)を一般公開して以来、コアビジネスプロセスへの人工知能(AI)の統合は業界を超えて広がっています。重要性が高まり、ますます普及しているAIは、私たちの生活、仕事、生産および協働のあり方の構造的変革を加速する、破壊的な可能性を示しています。制約のないAIへのテーマ投資アプローチは、これらの革新的なプロセスから生まれる機会の特定に寄与し、横断的な成長の可能性に関わる機会を投資家に提供します。

弊社は、AIが現在・将来において弊社のセマティカ戦略の投資可能なテーマに与える影響を示す、複数の使用事例を特定しました。

 

デジタルライフ

「サイバー」に関わる場所には、AIによるセキュリティが必要

接続性のレベルが高まり、より多くのサービスがクラウド環境に移行する世の中において、複雑かつ密接に統合されたIT環境は、多数の階層やアクセスポイントからの新たなサイバーリスクにさらされることとなり、サイバーセキュリティの重要性はますます高まっています。

高度化するサイバー脅威から企業を守るために、多層的、包括的、拡張可能で、かつシームレスなサイバーセキュリティへのアプローチが必要とされています。AIの統合によって、脅威の自動検知、悪意のあるパターンの予測、加速データ保護、リスクベースの条件付きアクセスなど の機能が、ビジネスプロセス、データおよびITインフラの多層的な保護の実現に貢献します。

例えば、高度なサイバーセキュリティ/クラウドセキュリティサービスを提供している2社の米大手企業は、「ゼロトラスト」の発想に基づくソリューションを開発しました。ユーザーID、デバイスセキュリティ認証情報およびアクセスポリシーに応じて、アクセス権の付与または留保が決定されるものです。これらのリアルタイムのリスクベースの条件付きアクセスアプリが、ユーザーから寄せられる多数の個別アクセス要求の処理を容易にするとともに、迅速化します。さらに、これによって、複雑であり、それ故により脆弱であるIT環境を、侵害から保護します。

同時に、企業によるAIアプリケ-ションのデータ漏洩の検出や、より安全性の高いAI環境の設計・構築を支援するサイバーセキュリティソリューションの重要性も高まっています。

AIを活用したサイバーセキュリティソリューションの破壊的な能力は、このセグメントの二桁台の予測市場成長率にも反映されています。

Projected double-digit market growth of AI in cyber security

Marketsandmarktes.com: AI in cybersecurity Market by Offering,Deployment Type, Security Type, Technology, Application, End User andGeography – Global Forecast to 2028. 2023年8月現在。

ヘルステック

外科医向けのAIトレーニング

国立腫瘍医療センター・ドレスデン (NCT/UCC)における腹部手術手法における機械学習(ML)の実用的価値に関する実験的研究によって、適用された4種類のMLモデルの全てが、脾臓のセグメンテーションにおいて、28人の患者のうち少なくとも26人について優れた結果を示しました。これは、ML手法が、低侵襲外科手術において、ほぼリアルタイムで解剖認識における適切な支援を提供する可能性を秘めていることを示しています。1

現代のヘルステックにおいて、AIは先進的な外科教育の開発に利用されています。例えば、米国を本拠とする、ロボット支援型の低侵襲外科手術用製品を開発しているある企業は、AIトレーニングアプリケーションの開発に取り組んでいます。

同社のAIトレーニングアプリは、無数の外科的介入から得られる情報を収集・評価し、様々な外科的技法を比較することにより、外科における学習の全ての段階において、個人に合わせた提案を行うことが可能であり、医師の継続的かつ選択的なスキルの向上に寄与します。

特に、AI支援型の外科医トレーニングは、介入時に最も適切な器具および手法の組み合わせを利用する訓練を外科医に施すことを通して、合併症の発生可能性の抑制や臨床結果の改善にも寄与します。

外科学習における人工知能

出所:出所: Multidisciplinary Digital Publishing Institute: Artificial Intelligence in Surgical Learning. 2023年2月現在。

AI拡張対話型エージェント は、コスト管理およびより迅速なサービス提供にどのように貢献するか

AI拡張対話型エージェントは、使いやすく、時間を節約できるという特徴によって、個人向けの看護を強化することができます。例えば、米国に拠点を持つ、あるヘルスケア・保険会社は、電話による要請を把握したり、自動応答するため、または着信した通話を対応可能な内部のリソースや担当部門へ転送するために、AIの一つの分野である自然言語処理(NPL)モデルを採用しています。これは、通話時間の短縮や、患者からの質問への迅速な対応につながる可能性があります。

リアルタイムで自動的に行われる患者の保険プラン承認は、特に時間当たり労働コストの高さの観点から、手動プロセスと比較し大幅なコスト削減にもつながる可能性があります。

患者のサービス体験を改善するためのデータ収集・分類

AI拡張対話型エージェントは、対話によって得られる患者のデータを収集および分類し、個人のニーズおよび病歴に合わせたサービスを提案することができます。これによって、患者の体験を大幅に改善することが可能になります。

AIは、収集したデータおよび情報に基づき特定の疾患を予測することも可能で、これをより良好な臨床転帰およびさらに大幅なコスト削減につなげます。

 

清浄な水と土地

農業におけるAI

AIの一部分である、機械学習のアプリケーションは、作物収量と品質を最適化し、雑草を抑制するとともに、殺虫剤の使用の大幅に削減にもつながるように精密に調整された、費用対効果が高い播種および散布スケジュールを農家が作成することを可能にします。リアルタイムでの雑草の区別および地域特性への適応によって、対象を絞った除草剤の使用や、雑草管理への最短ルートの見極めが可能になります。これは、食糧安全保障に対する極めて重要な貢献です。

ある農業機械および農場管理ソフトウェアの世界的メーカーは、コンピューターによる画像および機械学習を利用した精密農業システムを開発しました。これは、殺虫剤の大幅な削減に貢献するとともに、貴重な資源を節約し、作物の根の健康を促進できるように農業従事者を支援します。

普及率の向上は、精密農業市場のさらなる成長を促す可能性がある

世界の精密農業の市場規模は、12.8%2という二桁台の驚異的な年平均成長率(CAGR)によって2030年までに208.4億米ドルに達すると予測されていますが、まだ十分にさらなる改善の余地が残っています。

世界の農業従事者の間での高度な情報技術の普及率がまだそれほど高くないことは、精密農業市場の規模と価値の向上の妨げになっていると同時に、同セグメントの成長の可能性に関与する投資機会も提供しています。

これは特に、耕作に適した土地の面積が世界で最も広い3一方で、精密農業の普及率が最も低いアジアに当てはまることです。

Farming technologies adoption and willingness to adopt

出所:McKinsey survey among 5,500+ farmers across the globe. 2022年現在。

インフラ

インフラにおけるAI

建設およびエンジニアリング設備における障害パターンを予測するために、設備管理にAI制御データ分析ツールを適用すると、故障の回避、保守間隔の短縮、変動する状態に運用パラメーターを適応させること、機械の稼働寿命の延伸などに役立つ可能性があります。エラーの発生が少ない、高性能な設備によって、コストおよび時間の面でより効率的に建設プロジェクトを実行することができます。

AI制御およびデータ主導型の建設・エンジニアリング設備において、いわゆるデジタルツイン(物的資産の電子的レプリカ)の重要性が高まっています。

米国を拠点とする、電力、パイプライン、工業および通信業界のインフラサービスプロバイダーは、製造工場を丸ごと全面的に再現したデジタルツインを設計できるデータモデリング手法を開発しました。産業におけるモノのインターネット(IIoT)に基づき、解析エンジンによって、潜在的な動作不良や操業上の節減の見込みを予測しながら、工場操業への影響を最小限に抑えることができます。

労働力不足と安全対策向上への対応

例えば、建設現場でのコネクテッド車両や自動走行車の導入は、労働力不足への対応やプロジェクト遅延の抑止に貢献することができます。同時に、建設現場での安全対策向上に対応する自動走行車は、作業員の安全な労働環境に寄与しています。作業員が機械から離れることができるため、掘削の際に激しい振動や埃にさらされることがないためです。

技術の転用

最後に、鉱業および工業の現場における自動走行車によって得られる技術的な知見は、都市部での自動運転に転用することができます。

2022年から2028年の期間において、建設におけるAI市場は、24.3%という二桁台の成長率により、今後5年間で95.3億米ドル規模に達すると予測されています44

 

インテリジェントな機械

半導体製造プロセスがますます複雑化するとともに、これまでになく加速度的なスピードで下す必要がある多数の意思決定に、もはや人間の認識能力では対応することができません。このような状況の中で、製造プロセス全体における大量のデータを収集するAIベースの技術は、個々の処理ステップが正確に実行されたかどうかを判定するための重要なツールとなっています。

「人間が最初、コンピューターは最後」

マイクロチップ製造における重要なプロセスを提供している米国の企業は、半導体プロセスの開発において、人間を機械と比較する研究5を実施しました。その結果、プロセス開発の初期段階においては人間の方が優っている一方、目標に対する公差が厳しい場合においては、アルゴリズムの費用対効果が高いことが示されました。コンピューターのアルゴリズムを人間の専門家と連携させることによって、目標に対してコストを大幅に削減できる可能性があります。

AIは半導体業界にどのように価値を提供するか

最近のマッキンゼーの調査によれば、半導体企業はAIの活用によって多大なる恩恵を受け、長期的に年間最大950億米ドルの付加価値を生み出す可能性があります。

人工知能は、半導体企業にとって長期的に850億~950億米ドルの価値を生み出す可能性がある
人工知能が半導体のEBIT1に与える影響(単位:億米ドル)


Impact of artificial intelligence on semiconductors

1 利息および税金控除前利益
2 短期的な可能性とは、今後2~3年以内に得られる利益を意味します。
3 長期的な可能性とは、今後4年以上の未来に得られる利益を意味します。

出所:Mckinsey: Scaling AI in the sector that enables it: Lessons for semiconductor-device makers. As of April 2021

こうしたアップサイドの可能性と対照的に、AI/MLの導入によって既に価値を生み出している半導体デバイスメーカーは全体の3分の1に満たず、約70%がまだ試行段階にあり、その進捗は緩慢です。

これは、一方で、AI/MLを半導体の製造および設計に統合する成長余地があることを示しています。

次世代エネルギー

ダウンタイムの短縮:AI/ML対応の予知保全ソリューション

米エネルギー省(DoE)によれば、停電によって米国企業に発生するコストは、年間約1,500億米ドル6に及ぶとのことです。これは、特に不安定なエネルギーインフラにおける、インテリジェントな予知保全ソリューションの重要性を強調するものです。

ある米国の半導体メーカーは、センサーやIoTデバイスに直接実装されるMLを利用したスマート予知保全ソリューションを開発しています。これは、遅延時間を短縮したり、リアルタイムの管理上の決定を改善するだけでなく、データ保護の強化や、帯域幅要件の軽減を実現し、想定外の故障を事前に回避することにも寄与します。これらは緊急修理の削減および資産寿命の延長につながります。

 

ペットエコノミー

治療から予防へ:臨床治療のデジタル化

AIソフトウェアが複雑な疾患を検出する精度はますます高まっており、獣医の診察結果を解釈する上で役立っています。これは、より正確な診断、より効率的な投薬および治療、ならびに個々の予防的治療の必要性を迅速かつより高い確度で特定することにつながります。また、特に、ペットの長寿、および高齢のペットの特殊な(栄養上の)ニーズに関し、獣医医療市場の成長を促進する可能性があります。

獣医市場向けの製品およびサービスの開発・販売を手がけている、ある多国籍企業は、時間がかかりエラーが発生しがちな手作業のプロセスを排除して、より高い精度の結果を実現し、獣医師に信頼度の高い助言を与える、AIを活用した血液分析装置を考案しました。

テーマ投資事例としてのAI

AIの出現によって、弊社の制約のないテーマ投資アプローチに新たな、魅力的な側面が加わりました。そのことが、AIが主導する構造的変化から発生する成長の可能性に関与するための、多様な新たな観点をもたらしました。AIの破壊的な力、および弊社のセマティカ戦略に含まれる複数のテーマに対するその影響を詳細に理解し、評価することは、投資家が未開拓の機会を特定し、常に時代を先取りするための一助となる可能性があります。

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