リセッションはいつ起きるのか?

先に、いいニュースから紹介しましょう。世界中でインフレ率が低下しつつあります。インフレはやっとピークを打ったようです。同時に、金融政策はピーク金利に近付きつつあります。最近の連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)の会合での議論を考えれば、それは明らかです。それでも、利上げサイクルはおそらく完了していません。全体的に、一部の例外を除き、世界中の金融政策当局者はまだ利上げの手綱を引き締めています。

予想される利上げの回数と規模については、少なくとも予想金利の算出基準としてマネーマーケットの金利を用いるならば、幅広い市場コンセンサスがあるように思われます。しかし中央銀行は利下げに転じるまで、市場参加者が驚くほどはるかに長期にわたり主要金利を据え置くかもしれません。弊社は比較的慎重な見方を取っており、金利が「より高く、より長く」維持されると予想しています。その主な理由は、インフレがおそらく、広く予想されているよりも根強く続きそうだということです。エネルギー価格の低下とサプライチェーンの正常化がインフレ圧力を弱めるのに役立っていることは確かですが、コアインフレ率は多くの国で依然として懸念材料となっています。コアインフレ率は、エネルギー・食品以外の品目の価格に基づいて計算されるものであり、これらの品目に対するインフレ予想が低下する必要があります。

いずれにせよ、金融政策が循環的なピークに近付いているのであれば、実体経済のデータが再び注目されるようになると思われます。そこで改めて問われるのが、リセッション(景気後退)が起こるのかどうかということです。米国、ユーロ圏、英国、中国の購買担当者景気指数(PMI)はいずれも低下傾向にありますが、まだ、近い将来のリセッション入りを示唆するほどではありません。

とはいえ、成長は弱まっています。世界の製造業PMIはすでに景気後退傾向を示しており、この傾向はすぐにサービスセクターにも波及する可能性があります。

リセッション自体は、それほど意外なことではないでしょう。バンク・オブ・アメリカの調査によれば、世界のファンドマネージャーの大部分は、2023年末または2024年初めまでにリセッション入りすると見込んでいます。それより後にリセッション入りするとみているのは、ごく少数です。基本シナリオは「ソフトランディング」、つまり世界経済はいったん着陸するものの、またすぐ上昇すると想定されています。しかし、これまでのところ、この見解を裏付ける確かなデータはありません。

同時に、米国株のバリュエーションは、景気循環調整後のシラー株価収益率(PER)などから判断すると、まだ強気であるように思われ、将来の利益による裏付けが必要となるでしょう。重要なのは、国民経済計算での企業利益がS&P500種構成企業の利益を下回っていることです。この現象は過去において、危険信号となっていました。

このような環境下では、次のような株式と債券への戦術的な配分が妥当と考えられます。

 

  • 戦略的理由から株式への配分を見直している投資家は、インフレが長期にわたり高止まりする可能性が高いことを念頭に置いておく必要があります。つまり、より高い実質リターンを確保する必要があるため、株式保有を増やさなければなりません。
  • 戦術的な観点(あるいは、長期配分の一時的な調整という観点)から考えると、今はより慎重なアプローチがふさわしいと思われます
  • リセッションが迫りつつあります。
  •  少なくとも米国株のバリュエーションは、景気循環調整後のシラーPERなどから判断すると、まだ強気のように思われます。
  •  ユーロ圏の株式は、割高でも割安でもない水準で取引されており、英国と新興市場の株式は割安に見えます。 
  •  しかし、これらの地域の市場が米国市場からデカップリングする可能性は低く、米国市場は現在、一握りの大手ハイテク銘柄がけん引している状態です。
  •  バリュエーションを見る限り、投資家はこれらの大手ハイテク銘柄について慎重な姿勢を取るべきと考えられます。バンク・オブ・アメリカの調査によれば、ハイテク銘柄は現在、世界中のファンドマネージャーの間で最も人気があり、最もオーバーウェイトされています。株価がすでに投機的な水準に達していることは明らかであり、将来の利益成長による裏付けが必要となるでしょう。
  •  S&P500種構成企業の12カ月先予想PERをボラティリティと比較してみると、市場のバリュエーションも投機的であるように思われます。この指標は、市場参加者のリスクアペタイトを判断する材料となるもので、現在、1990年代初頭からの期間の平均を1標準偏差以上上回っています。
今週のチャート

世界の金融政策サイクル:現状

出所: Allianz Global Investors Global Economics & Strategy, Bloomberg (2023年6月30日現在)

投資テーマ:リスクとリターン
  • 低・マイナス金利は、過去の話です。債券のクーポンが(とうとう)プラスに転じ、債券が資産クラスとしてようやく「復活」しました
  • しかし、インフレ率が脱グローバル化や脱炭素化などによって当面高止まりすることを念頭に置いた上で、名目リターンからインフレ率を引いた実質リターンを見てみると、もっと期待リターンが高い資産クラスをポートフォリオに組み入れるべきかどうか迷うところになるでしょう。
  •  高いリターンは、高いリスクを伴います。
  •  戦略的なポートフォリオ配分は、短期の戦術的な検討事項ではなく、ポートフォリオの長期的な構造に焦点を当てます。もちろん、戦略的な配分を軸に、戦術的な調整を加えることもあります。 
  •  過去の動向を見てみると、興味深い戦略的な洞察が得られるかもしれません。
  •  長期的な時系列データ は、1801年から2022年末までの間、米国債の平均リターンは年3.3%、米国株のリターンは6.88%であったことを示しています。その差を生み出しているのは、2.84%のリスクプレミアムです。時系列データ の開始時点で債券に1米ドルを投資したならば、最終時点で1,300米ドル強を得られたことになります。しかし、株式に1米ドルを投資したならば、同じ期間中に240万米ドル以上に膨らんでいたでしょう。もちろん、それほど長期にわたって投資する人はいません。けれども、興味深い事実がもう一つあります。この期間を30年ごとに区切って見てみると、株式は2つのケースを除き、どの30年間でもリスクプレミアムを生み出していました。そして30年という長さは、退職後の生活のための貯蓄期間に相当する投資期間です。
  • 過去のパフォーマンスは将来のリターンを保証するものでもなければ、もちろん、差し迫ったリスクがすべて消え去ることを保証するものでもありません。しかし、過去において、リスクを取ることで大きなリターンが得られたことは確かです。

 

皆さんにとって好ましい、確かな事実が出てくることを祈ります。

 

出所:Jeremy Siegel database 1801 - 1900 & Elroy Dimson, Paul Marsh, and Mike Staunton 1900 – 2009, Datastream, Allianz Global Investors Capital Markets & Thematic Research; 2022年12月現在のデータ

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ほぼ毎年、4月末か5月初旬になると、株式への資産配分を減らした方がいいのかどうか聞かれます。その時に必ず引き合いに出されるのが、「5月に売り逃げろ」という古い格言です。

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