市場も後半戦へ
FIFAワールドカップも、いよいよ後半戦に入りました。7月中旬には新たなサッカーの世界王者が誕生しますが、投資家はその先の展開にも目を向けるべきでしょう。今後数カ月にわたり、資本市場に影響を及ぼすと考えられる重要なトレードオフ、トレンド、そして注目イベントにはどのようなものがあるのでしょうか?
最初の重要なトレードオフは、イランと米国の対立をめぐるものです。足元では原油価格の下落、株式市場の底堅さ、そして債券利回りのやや低下が見られており、投資家はこの対立に伴う下振れリスクを概ね織り込みから外しつつます。しかしながら、ホルムズ海峡における海上輸送が通常の状態に戻ったかどうかについては、まだはっきりと確認されていません(「今週のチャート」参照)。また、中東情勢が持続的に安定化するまでには、引き続き時間を要するとみられます。もっとも、市場にとっては、世界のサプライチェーンへの混乱が徐々に緩和されるだけでも十分な安心材料となる可能性があります。
原油価格やその他のコモディティの動向は、今後も中央銀行が注視する重要なテーマとなるでしょう。これまでのところ、各国の金融当局は、戦争に起因するインフレ上振れリスクと景気下振れリスクの双方に対し、慎重な姿勢で対応してきました。要中央銀行の中では、欧州中央銀行(ECB)と日本銀行のみが政策金利を引き上げており、一方で米連邦準備制度理事会(FRB)とイングランド銀行(BoE)は様子見の姿勢を維持しています。なかでも、新議長ケビン・ウォーシュ氏の下でのFRBの金融政策運営には、今後一段と注目が集まるとみられます。インフレ率がすでに数年にわたって目標を上回る水準で推移していることに加え、イラン情勢を巡る戦争とAI投資ブームという二つの新たなインフレ要因が重なっているため、FRBが今後数カ月のうちに利上げを回避することは、ますます難しくなっているように見受けられます。実際、米国の短期金融市場では、年内に少なくとも1回、25bpの利上げが行われるとの予想がすでに織り込まれ始めています。こうした政策転換は、他の中央銀行に対しても追随を促す圧力を強める可能性があり、とりわけアジアの中央銀行に影響するものと見られます。
政策金利の引き上げは、時間差を伴いながらも経済活動の重石となる可能性があります。しかしこれまでのところ、「世界経済は相次ぐショックに押されつつも、持ちこたえている状況」というシナリオはおおむね維持されています。米国では、AIブームと減税に支えられた個人消費が、足元のエネルギー価格ショックに対する緩衝材として機能しています。一方、欧州や日本では、積極的な財政政策が同様の役割を果たしています。2026年後半における重要な論点の一つは、エネルギー価格の下落が、企業や消費者の経済活動のための信頼感回復につながるかという点です。現時点では、その方向性を示す初期的な兆候が見られるものの、回復はまだ力強さを欠いており、本格的な改善が確認されるまでには至っていません。
今後の政治の動きも引き続き重要な注目材料です。 特に、米国の中間選挙が市場の大きな焦点となるでしょう。選挙結果によって、トランプ大統領が引き続き議会で多数派の支持を維持できるのか、それとも議会が分裂し、政治的な膠着状態に陥るのかが決定します。いずれの場合も、市場参加者はそれぞれのシナリオに対応していく必要があります。議会が分裂した場合、大規模な政策変更は実現しにくくなる一方で、財政政策を巡る対立が激化する可能性があります。その結果、米国の財政赤字や政府債務の持続可能性に対する懸念が再び浮上することも考えられます。欧州では、スウェーデンの議会選挙やドイツ東部における州議会選挙が予定されています。ただし、これらの選挙が短期的に資本市場へ与える影響は限定的にとどまる可能性が高いとみられます。
投資家は2026年後半を、自信を持ちながらも過度に楽観視することなく迎えています。投資家のポジション動向を見ると、株式に対しては総じて中立的なスタンスが維持されています。一方で、株式ファンドへの資金流入は引き続き堅調であり、テクノロジー・セクターのボラティリティ上昇によってここ数週間は値動きが大きくなっているものの、投資家の資金流入は衰えていません。また、主要な株価指数の多くは、テクニカル面でも良好な状態で2026年後半入りを迎えています。
2026年後半の株式および債券に関する戦術的アロケーションとしては、以下が適切と考えられます。
- 景気の底堅さと企業収益の良好な推移を踏まえると、地域やセクターを幅広く分散した株式のオーバーウェイトは引き続き妥当と考えられます。米国市場は引き続きテクノロジー・セクターが牽引役となる一方、欧州およびアジア市場は地政学的な動向や金融政策の影響をより強く受けるでしょう。
- 今後も株式市場はAIの発展によって大きく左右されるとみられます。AIブームと関連サプライチェーンの拡大がなければ、米国のみならずアジアや一部の欧州サプライヤー企業の経済成長や利益成長は特に低いものとなっていた可能性があります。もっとも、足元の値動きの大きさは、長期的な勝ち組となる企業と、一時的な期待先行で評価されている企業との差が広がっていることを示しています。現時点では、AI活用企業よりもAI関連の供給企業の方が見通しは明確であり、より選別的な投資姿勢が求められます。
- 株式への投資は、投資対象をより幅広いテーマやスタイルへ分散することも検討すべきでしょう。バリュー株は分散効果をもたらすだけでなく、金利上昇と名目成長率の高まりを伴うリフレーション環境において恩恵を受ける可能性があります。また、小型株はここ最近で比較的高い耐性を示しており、ポートフォリオの集中リスクを軽減する手段としても有効と考えられます。
- 国債については、景気減速への懸念が高まる局面でも、インフレ圧力が和らぐ局面でも恩恵を受ける可能性があり、リスク・リターンのバランスは概ね中立的とみられます。ただし、FRBを中心に主要中央銀行が想定以上に長期間にわたる金融引き締めを余儀なくされた場合には、下振れリスクが残ります。
- クレジットスプレッドは歴史的に見ても依然としてタイトな水準にあり、信用リスクに対する上乗せ利回りは限定的です。これは、企業を取り巻く環境が依然として良好であることを反映しています。
- FRBが実際に利上げを実施した場合、米ドルは短期的に支えられる可能性があります。しかし長期的には、高水準の財政赤字や政治的不透明感といった構造的な逆風が引き続き重石となることが予想されます。
今週のチャート
出所:Bloomberg、AllianzGI Global Economics & Strategy、AIS(船舶自動識別装置)、2026年6月30日時点。
過去の実績や予測、予想、見込みは将来の実績を示すものではなく、また、将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。
投資テーマ: 長寿化 ― 長期化する人生に備える資産形成
- 平均寿命は何十年にもわたり延び続けており、今後もさらに長くなる可能性があります。寿命の延伸は、年齢ごとの死亡率が低下していることによるもので、言い換えれば、長生きの人が、これまで以上に長生きする可能性が高まっているということです。
- 一方で、多くの先進国では、就業者数に対する年金受給者数の割合が上昇しています。その結果、現役世代が高齢者を支える賦課方式の公的年金制度には、ますます大きな負担がかかっています。
-
また、働き方も変化しています。パート勤務やマイクロリタイアメントと呼ばれる短期間の休暇をキャリアの途中で取得する働き方など、より柔軟なライフスタイルが広がっています。こうした自由な選択肢を実現するためには、給与以外の収入源を確保することが重要になります。
-
長寿化は単なる健康や医療のトレンドではありません。それは、老後資金や退職後の生活設計に関わる構造的なテーマです。長生きするほど、より長い期間にわたって安定した収入が必要になるからです。
- そのため、多くの投資家にとって、配当金や債券の利息(クーポン)などから得られるインカム収入は、経済的な自由を支える重要な柱になると考えられます。
- インカム収入は、「第二の給与」として機能する可能性があります。労働所得以外の収入源を確保し、収入の不足分を補う役割が期待できます。
後半戦も実り多いものとなりますように。