アジア:ホルムズ海峡の再開実現がプラス材料に
米国とイランの覚書締結を受け、ホルムズ海峡が再開される見込みですが、正常化にはまだ障害が残っています。他地域に移動しているタンカーが同海峡に戻るまで、数週間かかるかもしれません。また、生産を停止していた原油・天然ガス田の本格稼働にも、ある程度の時間が必要です。加えて、ホルムズ海峡が60日後も開放されているかどうかは不透明であり、その行方はイランの核開発計画や濃縮ウランの処理といった最大の争点をめぐる米国とイランの交渉の進展に左右されるでしょう。
とはいえ、覚書締結により、世界の原油価格は近いうちに1バレル当たり70~80米ドル程度に落ち着く可能性があります。アジアは、域内の国のほとんどがエネルギーの純輸入国であることから、エネルギー価格の下落の恩恵を最も受ける地域の一つです。世界の原油価格が10米ドル下落するごとに、アジアの国内総生産(GDP)成長率は約20~30bp押し上げられると試算されています。
世界のエネルギー価格の下落と石油精製品の供給再開は、アジア全体、特に以下の国々への圧力緩和に役立つでしょう。
- フィリピン、韓国、オーストラリア、シンガポール、香港:燃料補助金制度を設けていないことから、インフレが和らぐと見られます。
- インドネシアとマレーシア:直接的な燃料補助金制度を導入していることから、財政収支への圧力が軽減されるでしょう。
- タイ、インド、フィリピン:世界のエネルギー価格が落ち着くにつれ、突出して大きなエネルギー貿易赤字は縮小する見通しです。
- インド、日本、オーストラリア:中東からのディーゼル、ナフサ、尿素、天然ガスなどの石油精製品の供給再開の恩恵を受けることになります。
ここ数カ月、世界のエネルギー供給は、中国の石油・ガス輸入の減少と米国の化石燃料輸出の拡大の同時進行によって支えられてきました。5月に中国の精製燃料の輸出が再開されたことも、アジア域内の深刻な供給不足の緩和に貢献しています。直近の6~7月のタンカーデータは、この動向が当面継続し、現在の需給状況が維持される可能性を示唆しています。
投資の観点からは、市場の懸念が和らぐにつれ、大幅に売られた一部のアジア諸国(フィリピン、インドネシア、インドなど)の国債と通貨が戦術的な買い機会となる可能性があります。株式については、エネルギー価格の下落により、アジアにおける製造業・設備投資のスーパーサイクルに対する目先の重しが軽減されます。これは、韓国、台湾、日本、中国、マレーシアなど、人工知能(AI)の比重の高い市場に追い風となると考えます。
今週のチャート
出所:Bloomberg、AllianzGI Global Economics & Strategy、 2026年6月時点。
過去の実績や予測、予想、見込みは将来の実績を示すものではなく、また、将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。
来週を考える
米国では、6月の非農業部門雇用者数をはじめとする雇用統計が焦点となります。5月の雇用増17万2,000人、失業率4.3%を踏まえ、投資家は労働市場の力強さを示すさらなる材料を求めるでしょう。火曜日に発表される6月のシカゴ購買部協会景気指数(PMI)と木曜日に発表される米供給管理協会(ISM)製造業景気指数も注目されます。火曜日発表の6月の消費者信頼感指数からは、米国の個人消費の最新状況がうかがえるでしょう。
ユーロ圏で最も注目されるのはインフレデータで、水曜日に6月の統一消費者物価指数(HICP)の速報値が発表されます。市場は、総合・コアともに2%目標を上回る状況が続いた場合の欧州中央銀行(ECB)の対応を推し量ることになるでしょう。インフレ以外には、6月の企業景況感指数、6月の消費者信頼感指数、5月の失業率も注目すべき重要な指標となります。
日本では、水曜日に第2四半期の日銀短観が発表されます。エネルギー価格高騰の圧力を受けて、製造業・非製造業ともに、大企業・中小企業を問わず景況感の悪化が見込まれます。月曜日には消費者需要の状況を反映する5月の小売業販売額、火曜日には5月の雇用統計と住宅着工件数が発表されます。
中国では、火曜日に6月の国家統計局の製造業PMIが発表されます。50を割り込めば、成長モメンタムのさらなる鈍化を示唆することになります。
ホルムズ海峡の再開に伴い、高いリターンに恵まれますように。