波乱の時代
私たちは今、波乱の時代を生きています。国際政治では次第に勢力圏の変化が色濃くなっていますが、現在の金融市場は、イランやグリーンランドをめぐる最近の混乱といった大きく報じられている地政学的リスクにとどまらず、マクロ経済指標や企業収益、中期的な利回りに影響する要因に注目しています。2025年の好調なパフォーマンスを受けて、株式市場は年初から概ねポジティブなモメンタムでスタートしました。商品市場も上げ幅を拡大し、金と銀は1月の大半にわたり上昇基調を維持しましたが、その後は市場のボラティリティが高まりました。対照的に債券市場のパフォーマンスはまちまちでした。欧州国債は利回り低下の恩恵を受けましたが、英国債と米国債は売り圧力にさらされました。
為替市場は米ドルと日本円の弱さが目立つ展開となっており、複雑かつ相反する政策環境を反映しています。日本銀行(日銀)は利上げを開始しましたが、そのアプローチは依然として慎重かつ段階的です。全体的な政策環境を考えると、この慎重姿勢は当然と言えます。高市政権は拡張的な財政スタンスを追求している一方、日銀はデフレ対策を目的とする数十年来の枠組みから脱却しようとしています。2月初旬に高市首相が発表した解散総選挙は、政権の財政路線に対する政治的支持を確保することを狙ったものでした。同時に、日本国債のイールドカーブの長期ゾーンでは、インフレ期待の高まりがより顕著になりつつあります。これは、日本の投資家による海外資産からの資本還流を促すと考えられます。そのような資本の流れは、米ドル売りの増加を通じて円を下支えすると同時に、他の主要債券市場、特に米国市場で利回りの上昇圧力となるでしょう。この動きは、金利差を利用し、根強い円安と日本国債の低利回りを前提とするいわゆるキャリー・トレードの巻き戻しを引き起こす可能性があるため、広範な影響を及ぼします。
一方、米ドルは懸念材料となっています。米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、直近の連邦公開市場委員会(FOMC)で、金融政策の据え置きを選択しました。この決定は広く予想されており、ドル安や緩やかな経済成長、インフレの抑制という現行の状況を考えれば概ね適切だったと言えます。この決定はまた、トランプ大統領がケビン・ウォーシュ氏を次期FRB議長に指名したという政治的背景にかかわらず、FRBの制度的独立性を強調するものでした。こうした状況下で、ユーロには相対的に追い風が吹いています。しかし、ユーロの強さを受け、欧州中央銀行(ECB)がいずれ利下げを通じて過度な通貨高を抑制しようとするのではないかという議論が次第に活発になっています。幸いなことに、ユーロ圏のマクロ経済状況は概ね良好であるため、そのような措置は必要でもなければ差し迫ってもいないように見えます。経済成長は堅調で長期的な潜在成長率に近く、労働市場は低い失業率で安定し、インフレはECBの目標へと収束し続けています。ほぼ同様の評価が米国にも当てはまり、パウエルFRB議長も最近、同じ見解を表明しました。
サム・アルトマン氏によって広く知られるようになった「知性の時代」の急速な台頭は、世界経済全体の構造変化を加速させています。その広がりと勢いにおいて、この展開は、ロシアの経済学者ニコライ・コンドラチェフが提唱したような新たな長期的な成長サイクルに類似しています。特に米国にとって、人工知能(AI)は戦略的な成長の柱となっており、過小評価すべきではありません。同時に、イノベーションのペースと市場の割高なバリュエーションを背景に、2000年代初頭のテクノロジーバブルとの比較が再び浮上しています。そのような懸念は理解できるものの、現状を単純化しすぎる恐れがあります。以前のテクノロジーサイクルとは異なり、AIはすでに大規模に導入されており、幅広い業界でビジネスモデル、生産性、業務プロセスに目に見える効果をもたらしています。市場は、AI関連セクターにおける収益成長、収益性、利益率拡大に高い期待を抱いています。しかし、供給能力が限られた状態が続いていることは、典型的な投機バブルの概念が当てはまらないことを示唆しています。多くのセグメントで、コンピューティングパワーに対する需要は供給可能な量を大幅に上回っています。こうしたボトルネックは、マイクロチップやネットワーク機器から、大規模データセンターの運営に必要な電力の可用性などのインフラの制約にまで及んでいます。なお、現在進められている設備拡張のかなりの部分は、大手テクノロジー企業の潤沢なキャッシュフローを活用した内部資金で賄われていることに注目すべきです。
そこで投資家にとって重要となるのが、現在の株式バリュエーションが将来の収益成長に対する現実的な期待を適切に反映しているかどうかということです。タイミングよく、決算発表シーズンが非常に好調なスタートを切りました。割高なバリュエーション——特に、AIブームが大きなドライバーとなっているテクノロジーセクターの一部における——は、最終的には持続的な利益成長による裏付けを必要とします。例年通り、米国株は1月に素晴らしいパフォーマンスで市場を牽引し、先月決算を発表した企業の約4分の3がアナリスト予想を上回りました。この数字自体は過去の水準とほぼ一致していますが、特筆すべきは、特にテクノロジー企業(いくつかの大型主力株を含む)が一貫してコンセンサス予想を上回る利益を計上したことです。比較すると、ストックス欧州600指数構成企業のパフォーマンスは控えめとなっています。ただし、本稿執筆時点では決算シーズンはまだ序盤であり、評価は確定的ではありません。
こうした波乱の時代を踏まえると、次のような株式と債券への戦術的な配分が考えられます。
現在のマクロ経済環境を踏まえると、地域・セクターを分散した株式をオーバーウェイトにするスタンスが妥当と考えられます。
- 米ドルの動向は、特に国際分散投資を行う投資家にとって重要な変数です。最近のドル安が近い将来に持続的に反転する可能性は低いように見受けられます。米ドルは世界の基軸通貨としての役割を維持しているものの、構造的な課題がより顕著になっています。財政赤字が国内総生産(GDP)の6%に近付く中、米国の債務の持続可能性への懸念はもっともと思われます。また、地政学的な動向により、一部の中央銀行にとって外貨準備を米ドルから分散させる動機が高まっています。
- ドル安は欧州株の相対的な魅力を高め、さらなる資本流入を支える可能性があります。欧州市場におけるバリュエーションは米国市場と比較して割安な水準にあり、いくつかのセクターでは利益成長がより安定しているように見えます。これを後押ししているのが、欧州の戦略的自律性の強化を目指す政策イニシアチブであり、その取り組みは防衛だけでなく、エネルギーやテクノロジー、産業政策などの分野にも及んでいます。
- 欧州株への配分を増やすことは、ポートフォリオのバランスの改善にも寄与します。MSCIワールド・インデックスに連動した運用を行っている投資家は現在、時価総額ベースで株式エクスポージャーの75%近くが米国株に集中する形となっています(チャート参照)。
- 新興国市場の株式も、投資妙味があります。多くの新興国、特に中国以外の国々は、堅調な経済モメンタムに加え、良好な金融・金融政策環境、収益予想の上方修正、比較的魅力的なバリュエーションを兼ね備えています。こうしたファンダメンタルズにかかわらず、投資家のポジショニングは依然として軽めです。韓国や台湾などの市場は、世界的なテクノロジーブームの恩恵を受けており、インドなど他の市場は、引き続き強固な構造的成長ドライバーを有しています。また、ラテンアメリカの一部は金属価格の上昇が追い風となる見込みです。
- 世界の債券市場におけるトレンドの乖離は、デュレーションを積極的に調整するアプローチが適切であることを示唆しています。米国では、長期債がインフレ期待の上昇とドル安による逆風に直面しており、短期債が選好されます。
- 対照的に、新興市場国債は、高い名目金利と中央銀行による金融緩和余地に支えられ、ポートフォリオに追加する長期資産として魅力的かもしれません。
このような波乱の時代において、配当付き株式への配分を高めることは、ポートフォリオのボラティリティを和らげるのに役立ちます。配当は歴史的に比較的安定したインカム源となっており、弊社の分析によれば、長期的なトータルパフォーマンスのかなりの部分を占めています。
今週のチャート
出所:LSEG Datastream、AllianzGI Global Capital Markets & Thematic Research、2026年2月3日時点。
過去の実績や予測、予想、見込みは将来の実績を示すものではなく、また、将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。
投資テーマ:配当からの投資収入
- ストックス欧州600指数を構成する企業が支払う配当金は、前年比約4%増の約4,540億ユーロに上る見込みです。ドイツ企業だけでも、配当金は2025年の推定560億ユーロから緩やかに増加し、およそ580億ユーロになると予想されています。
- これは、欧州株式市場における配当支払額の増加という、数年来のトレンドの継続を示すものとなります。
- 配当は、株式投資のトータルリターンにおいて重要な役割を果たします。過去40年にわたり、MSCIヨーロッパ構成銘柄の年率換算トータルリターンに占める配当の割合は39%弱でした。比較すると、MSCI北米構成銘柄ではトータルリターンに占める配当の割合は21%弱、MSCI太平洋構成銘柄では49%強でした。
- 弊社の分析によると、配当付き銘柄への配分が高いポートフォリオは、配当性向の低い銘柄に重点を置いたポートフォリオに比べ歴史的にボラティリティが低くなっています。この効果は、配当支払い企業の方が一般により規律ある資本配分方針を採用していることと、定期的なインカム源がもたらす安定化効果を反映しています。
- 重要なポイントとして、配当支払いは底堅い傾向があります。過去のデータを見ると、企業が配当を減額することは稀であり、むしろ段階的な増配、あるいは少なくとも既存の配当水準の維持を選好しています。
- その結果、配当は資本所得の比較的信頼性の高い基盤となります。この特性は、波乱の多い市場環境においては特に価値があります。
波乱の時代にあっても、動き続けましょう。