ブレーキを踏んでも加速する経済
地政学情勢はかつてないほど不安定な状態にあり、その過程で原油価格も新たな高値を付けています。それでも、年末に向けて景気回復の広がりは増していく見通しであり、現時点では過熱した景気拡大局面に入るとはみられていません。経済活動が再び勢いを増す一方、主要中央銀行はインフレ抑制を重視し、金融引き締め姿勢を一段と強める可能性があります。景気拡大と政策金利上昇が同時に進行する環境、この綱引きこそが、第4四半期の資本市場の方向性を左右する重要なテーマとなりそうです。
経済の状況については、改めて見直してみる必要がありそうです。当社独自のマクロ経済の広がりを示す指標は8月に大きく低下しましたが、一時的なものである可能性が高いと考えています。企業のマインドはすでに改善しており、製造業も比較的底堅く推移しています。さらに、これまで出遅れていたサービス業も追随し始めています。こうした動きは、この夏の減速が景気の転換点ではなく、一時的な足踏み局面に過ぎなかったことを示唆しています。政治的対立、高い資金調達コスト、根強いインフレといった逆風があるにもかかわらず、世界経済は想像される以上に底堅さを維持しています。
しかし、地域によっては異なる状況にあります。米国では、堅調な成長基盤を背景に、景気が再び加速する兆しが多く見られます。欧州では、経済指標が予想を上回る結果となるケースが増えています。特にインフラ、防衛、エナジートランジションに関連する政府支出が需要を下支えしており、原油価格上昇といった外部ショックを緩和する役割も果たしています。そのため、ドイツ経済はこれまでの予想以上に底堅く推移する可能性があります。日本でも景気回復の裾野が広がっています。一方、中国経済は引き続き力強さを欠いていますが、追加の政府支出が第4四半期の景気を一時的に後押しする可能性があります。
こうした動きは、典型的な景気過熱局面を示すものではなく、景気拡大の裾野が広がり、その持続性が高まっていることを示唆しています。これは市場にとって重要な意味を持ちます。企業の売上高と利益の拡大は、株価の支援材料となるだけでなく、企業の健全な財務運営を支える要因にもなると考えられます。さらに、データセンターや電力網、自動化分野への投資に加え、AIの導入・活用拡大が新たな成長エンジンとなっています。その恩恵は大手テクノロジー企業にとどまらず、設備機器、素材関連、公益事業、産業機器など幅広い分野へと波及しています。
景気の底堅さの裏側で、インフレ圧力の低下は緩やかなものにとどまっています。多くの国でインフレ率は依然として中央銀行の目標水準を上回っており、加えてエネルギー価格の変動、コモディティ市場の逼迫、政府支出の拡大が物価上昇圧力を支えています。需要の拡大は成長を後押しする一方で、インフレの抑制をより難しいものにしています。
9月の利上げに続き、米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)が年末までにそれぞれ0.25%の追加利上げを実施すると予想しています。日本銀行(日銀)についても、慎重ながら金融政策の正常化に向けた歩みを続け、追加利上げに向かう可能性が高いとみています。中央銀行は、現時点で金融引き締めを緩和する理由がないという事実は明確です。景気や雇用情勢が大きく悪化しない限り、各国の中央銀行は引き続き物価安定の達成を最優先に政策運営を進めると思われます。
堅調な経済指標が追加利上げ観測を強める可能性があることを意味します。特に、長期債利回りは高水準で推移し、さらなる上昇余地も考えられます。ただし、この利回り調整が必ずしも市場の混乱につながるわけではありません。重要なのは、所得や企業利益の増加によって、資金調達コストの上昇が吸収されることです。
もっとも、リスク要因には引き続き注意が必要です。中東情勢が再び緊迫化すれば、エネルギー価格のさらなる上昇につながる可能性があります。また、労働市場や個人消費が予想以上に伸び悩めば、景気回復の見通しが損なわれるおそれがあります。さらに、米国の中間選挙や、基軸通貨としての米ドルの地位が徐々に低下する動きも不確実性を高める要因であり、政府債務も依然として懸念材料となっています。国債の供給拡大に伴い、投資家はより高い利回りを求める可能性があります。
それでも、リスク資産を取り巻く環境は総じて良好な状態が続くと考えています。企業業績は堅調に推移しており、足元の価格調整によって、いくつかの市場セグメントでは再び魅力的な投資機会が生まれています。特に、新興国株式や一部の国債市場では投資妙味が高まっています。ただし、これまで以上に分散投資が重要となります。少数の大型グロース株が市場をけん引してきた結果、多くのポートフォリオは特定銘柄への依存度が高まっています。そのため、安定的にキャッシュフローを創出するバリュー株は、有効な分散投資先となる可能性があります。
今後数週間は、以下の3つのポイントに注目しています。第一に、企業マインドの改善が受注や生産、雇用の拡大につながるかどうかです。第二に、インフレ動向です。これが中央銀行の追加的な政策対応の度合いを左右することになるでしょう。第三に、これから始まる決算発表シーズンです。デジタルインフラやエネルギー供給、オートメーション分野への積極的な投資が、実際に企業業績の押し上げの要因となるかが焦点となります。
これらの指標がおおむね良好な結果となれば、市場上昇の裾野はさらに広がる可能性があります。一方で、期待に届かない結果となった場合には、バリュエーションが高く、ネガティブ材料が十分に織り込まれていない資産ほど大きな影響を受けることになるでしょう。
総じて、投資環境は難しい局面にありますが、魅力的な投資機会は依然として存在しています。景気の拡大は、インフレや政策金利の上昇、さらには地政学的リスクを伴いながら進んでいます。そのような環境においては、十分な分散投資を心掛けるとともに、バリュエーションを見極め、過度な期待ではなく企業の収益力に着目することが、より良い投資の成果につながると考えています。
戦術的な資産配分として、以下が考えられます。
- 株式については、小幅なオーバーウェイトが妥当と考えます。経済成長の恩恵や長期的な投資拡大によって業績が支えられる市場や企業に重点を置くべきでしょう。地域別では、新興国市場が最も有望であり、次いで日本、米国、欧州を選好します。
- アジアでは、広範な産業サプライチェーンの存在に加え、AIの普及や設備更新の進展を背景に、関連サプライヤーに投資機会があるとみています。
- インドは、個人消費主導の経済成長と良好な人口動態という強みを併せ持っています。一方、日本は成長を後押しする政策やコーポレートガバナンスの改善の恩恵を受けています。
- テーマ別では、オートメーション分野、バイオテクノロジー、電力網、金関連銘柄に引き続き注目しています。また、割安なバリュー株を組み入れることで、高いバリュエーションが付与されているテクノロジー銘柄への依存度を低減できると考えます。
- 先進国国債については、全体として中立から慎重なスタンスが適切と考えます。インフレ圧力が根強く、財政赤字も高水準にあるなか、追加利上げも織り込まれているためです。
- この分野では、欧州国債に相対的な投資妙味があるとみています。ただし、フランスについては政治リスクを踏まえ慎重な姿勢が必要です。
- 残存期間の短いゾーンでは、ドイツ国債の方が米国債よりも魅力的な投資機会を提供していると考えます。一方、長期ゾーンでは英国債が相対的に魅力的とみています。また、インフレ圧力の長期化を背景に、米国の物価連動国債も恩恵を受ける可能性があります。
- 新興国債券については、実質金利が高く、財政基盤が健全で、エネルギー輸出国である国々を選好します。
- 社債のリターンは主としてクーポン収入によってもたらされると考えています。そのため、特に金融セクターや景気変動の影響を受けにくい消費関連セクターを中心に、信用力の高い発行体を優先すべきでしょう。
- 金はもちろん、幅広く分散されたコモディティ投資も、地政学的緊張、供給制約、通貨価値の安定性に対する懸念が高まる環境下で、ポートフォリオの防御手段として有効と考えます。
- 為替については、短期的には明確な方向感は見出しにくい状況です。しかし中期的には、米ドルは主要通貨に対して下落しやすい環境にあると考えています。
今週のチャート
世界センチメント指数は、Economist Intelligence Unitの国別レポートにおけるポジティブおよびネガティブなワードの出現頻度を分析し、全体的なセンチメントを定量化したものです。
出所:Allianz Global Investors Global Economics & Strategy、Ahir/Bloom/Furceri(2026年7月31日現在のデータ)。
過去の実績や予測、予想、見込みは将来の実績を示すものではなく、また、将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。
投資テーマ: 長寿化 ― 長期化する人生に備える資産形成
- 平均寿命は何十年にもわたり延び続けており、今後もさらに長くなる可能性があります。寿命の延伸は、年齢ごとの死亡率が低下していることによるもので、言い換えれば、長生きの人が、これまで以上に長生きする可能性が高まっているということです。
- 一方で、多くの先進国では、就業者数に対する年金受給者数の割合が上昇しています。その結果、現役世代が高齢者を支える賦課方式の公的年金制度には、ますます大きな負担がかかっています。
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また、働き方も変化しています。パート勤務やマイクロリタイアメントと呼ばれる短期間の休暇をキャリアの途中で取得する働き方など、より柔軟なライフスタイルが広がっています。こうした自由な選択肢を実現するためには、給与以外の収入源を確保することが重要になります。
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長寿化は単なる健康や医療のトレンドではありません。それは、老後資金や退職後の生活設計に関わる構造的なテーマです。長生きするほど、より長い期間にわたって安定した収入が必要になるからです。
- そのため、多くの投資家にとって、配当金や債券の利息(クーポン)などから得られるインカム収入は、経済的な自由を支える重要な柱になると考えられます。
- インカム収入は、「第二の給与」として機能する可能性があります。労働所得以外の収入源を確保し、収入の不足分を補う役割が期待できます。