欧州中央銀行理事会
従来の方針通りの動き
主なポイント
- ECBは6月11日の会合で政策金利を25bp引き上げ、2.25%とする見込みです。これは、3月以降に示されてきたガイダンスや、2025年の戦略アップデートで打ち出された方向性と整合的です。
- 当社の見解では、金融引き締めは依然として必要だと考えています。供給面でのショックが相次いでおり、インフレ率が目標を上回る状態が続いているためです。またECBは、コロナ後の局面において対応の遅れが結果的により急激な利上げを招いた状況の再現を避けたいと考えています。
- ラガルド総裁は、追加的な引き締めの可能性を残す姿勢を維持する可能性が高く、当社のベースケースでは、9月に最後の25bpの利上げを見込んでいます。なお、7月に利上げが実施されるためには、インフレ見通しがさらに大きく悪化する必要があります。
ECB理事会(6月11日)の見通し
当社の見解では、6月の利上げを正当化する材料は非常に強いと考えています。最近の原油価格の再上昇により、ユーロ圏のインフレ率は再び目標を上回り、5月の総合インフレ率は前年比3.2%に達しました。足元の原油価格はECBが3月の見通しで前提としていた水準を大きく上回っており、これにより、インフレ見通しは上方修正される可能性が高いと見込まれます。その結果、予測期間を通じてインフレ率は目標を大幅に上回る状態が続き、2026年には3%近く、2027年でも約2.2%に達する見通しです。さらに、ホルムズ海峡における混乱が続いていることから、高止まりしたエネルギー価格が従来の想定よりも長期化するリスクも強まっています。エネルギー以外の分野でも、特に消費財を中心に、より広範な価格上昇圧力の初期的な兆候が見られており、二次的なインフレ波及効果が生じ始めています。
現在の環境は、コロナ後の局面とは大きく異なります。当時は、サプライチェーンが依然として大きく混乱している中で、短期間に抑制されていた需要が一気に解放されたことが、インフレ急騰の一因となっていました。しかしながら、ECBはこれ以上対応を遅らせることを望んでいません。供給ショックが繰り返し発生する環境においては、需要減退がより明確になるのを待つことは、政策対応が後手に回るリスクを高めるためです。
金融引き締めを景気減速局面で進めることには、特に金融環境や信用の波及経路に対するリスクが伴うのも事実です。しかしながら、より大きなリスクは、インフレ期待の上昇を容認してしまうことにあります。このような状況では、段階的で先手を打った引き締めの方が、より慎重かつ望ましい対応だと考えられます。
6月以降については、ラガルド総裁は柔軟でデータに基づく姿勢を維持しつつ、追加的な引き締めを暗に支持する対応をとると見込まれます。当社では、9月に最後の25bpの利上げが実施されると予想しています。7月といったより早いタイミングでの利上げには、特にコア項目を中心に、インフレ率がさらに大きく上振れるサプライズが必要となる見込みです。一方で、利上げの一時停止が検討されるのは、景気動向が明確に悪化する、あるいはインフレ圧力がはっきりと緩和する場合に限られると考えられます。
全体として、ECBは依然として引き締め局面にあります。急激ではないものの、明確に引き締め方向へのバイアスがかかっています。6月の決定はこの戦略の延長線上に位置づけられるものであり、段階的かつデータに基づきながらも、物価安定の回復にしっかりと軸足を置いた対応といえます。これは、AI主導の成長がより強いにもかかわらず、より長く様子見姿勢をとる傾向にあるFRBとは対照的です。その結果として、欧州では米国に比べてイールドカーブのスティープ化圧力は限定的にとどまり、インフレ率もより速いペースで中央銀行の目標に収束していくとみています。