捨てるのはもったいない― 投資機会としての循環フードエコノミー

2030年には、世界で年間20億トンを超える食品が失われたり捨てられたりすると予想されています1。国連世界食糧計画(WFP)によれば、この「失われた」食品は、20億人以上、すなわち世界の栄養不足人口の2倍を超える人々に食料を供給するのに十分な量に相当します2。国連食糧農業機関(FAO)の推定では、今日飢餓に苦しむ人々が8億2,800万人もいる一方3、食料生産量は、世界人口の1.5倍に相当する人々を食べさせるのに十分な水準に上っています4

なぜそのようなことが起こるのか?

世界人口全体に食料を供給できない大きな原因は、食品廃棄にあります。世界的に見ると、食品全体の3~4割5、金額にして1.2兆米ドル相当6の食品が毎年廃棄されています。

私たちは、食品の生産・消費から生じる廃棄物の量を減らし、廃棄物から貴重な栄養分を回収して食品のバリューチェーンに再投入する循環型システムに転換することで、この問題の解決を図ることができます。

食品廃棄物の削減―長期的な利益をもたらす取り組み

食品廃棄物の削減は一般に、経済、食料の安全保障、環境の三方にメリットをもたらす「トリプルウィン」と表現されてきました。しかし、食品廃棄物が企業にもたらす幅広い影響に関して、4つ目の「ウィン」を追加することを検討すべきです。というのも、投資家は、企業が食品の無駄を減らすことを支援し、結果的にコスト削減と生産の最適化を支えることで、経済的な利益を引き出せるからです。

世界資源研究所(WRI)最近公表した調査結果は、食品廃棄物への取り組みには非常に大きな経済的インセンティブがあることを示しています。分析した700社では、食品廃棄物の削減に投資した1米ドルにつき、中央値で14米ドルの投資利益を実現していました7

政策の追い風:食品廃棄物が政策課題に

世界的に、食品廃棄物の回収や開示を義務付ける規制を導入する政府が増えています。

たとえば、英国政府は、食品廃棄物の回収と開示の義務化を進めており、食品を最初から埋め立てや焼却に回すことは認められなくなります。

米国では、一部の州・地方自治体が有機廃棄物の禁止や有機物のリサイクルを義務付ける法律を導入しています。

フランスでは早くも2016年に、販売期限が近付いた食品を捨てるのではなく、慈善団体やフードバンクに寄付することを食料品店に義務付ける法律が成立しました。

このような新たな規制や既存の規制は、税金や追加の資本的支出といった形で企業に幅広い影響をもたらします。こうした要件を満たす準備ができている企業は、長期的に利益を得られる立場にあります。

食品副産物の新たな活用法を生み出す企業

ここ1年半の間に、食品廃棄物のアップサイクルにおけるイノベーションが急増しています。こうした取り組みには、副産物を利用して新しい食品や機能性原料を開発したり、植物性ミルクの生産過程で生じる大豆・大麦・アーモンドの搾りかすなどの副産物を食物繊維の豊富なグルテンフリーの粉に加工したりするものなどがあります。また、食品廃棄物をカーボンニュートラルな生分解性繊維に転換する取り組みや、食品廃棄物から全く新しい産品を生み出す取り組み(動物性脂肪をバイオ燃料に転換するなど)も行われています。

変化を起こす方法はたくさんあります。アリアンツGIのフードセキュリティ・ファンドは、こうした規制の追い風の恩恵を受けられる企業に投資します。弊社は、より持続可能な食料生産のためのソリューションを提供する企業を見つけ出し、サプライチェーン全体に投資するとともに、アップサイクルなどの長期的なソリューションをサポートすることによって廃棄物の削減を目指します。豊富な栄養分を含む副産物のアップサイクルにより、企業はコスト削減とサプライチェーンの強靱性向上を図ることができ、それが結果的に長期的な利益構造の改善につながるというのが弊社の考えです。

dog with veterinarian
ソリューションの一端を担う

持続可能な食料生産、廃棄防止、アップサイクルの分野におけるイノベーターを見つけ出すことにより、弊社は、この未来志向のセクターのバリューチェーンにおける成長チャンスに関わる魅力的な機会を投資家に提供するだけでなく、食料の安全保障と廃棄物管理に関する喫緊の課題への取り組みを後押しします。

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