地政学的ショックと分断するトレンド

要点
  • 多くの中央銀行が金利据え置きを維持する中、イラン情勢の緊迫化により、次の一手に向けた政策判断が各国で分かれつつあります。
  • コア金利市場における急速な価格調整は、短期的な相対価値投資の観点で魅力的なエントリーポイントをもたらす可能性があります。
  • 新興国資産、人民元建て資産、高格付けのスプレッド商品といった非伝統的分散投資への選別駅な配分を維持することで、株式や金利のボラティリティに対してポートフォリオの安定化に寄与する可能性があります。
4月の振り返り

4月は情報の多い1ヵ月となりました。イラン情勢が引き続き市場の注目を集める一方で、中央銀行の動向、マクロ指標、IMFのメッセージ、企業決算なども投資家の関心を集めました。原油価格は日々の指標として機能し、関連ニュースが出るたび、インフレ、消費動向、政策への影響を巡る議論が再燃しました。こうした不透明感がある中でも、主要株式市場は紛争発生以降の下落分をすべて回復し、クレジットスプレッドも戦前の水準を下回るまで縮小しました。AI主導の市場モメンタムと底堅い企業業績が、米国とイランの脆弱な停戦やエネルギー主導のマクロショックへの懸念を上回る形となりました。また、G10の主要6中銀は、コア金利が上昇する中でも政策金利を据え置きました。

私たちの見解

ホルムズ海峡が閉鎖された状況が続く中、マクロ環境の基調が変化する可能性が高まっています。すなわち、これまでの「高成長・安定インフレ」から、「成長鈍化・インフレ上昇」へのシフトです。仮に今月中にも海峡再開で合意に至ったとしても、輸送の滞留解消や貿易フローの正常化には数ヵ月を要する公算が大きいとみられます。

株式市場は概ね落ち着いた動きを維持している一方で、コア金利は大きく変動し、エネルギー価格上昇が金融政策見通しに与える影響を織り込む形でプライシングが進みました。クレジットおよび新興国市場は引き続き株式ベータに大きく左右されています。こうした市場の乖離した動きは、資産クラス、地域、イールドカーブ、セクター、個別銘柄ごとに、ショックの吸収のされ方が大きく異なっていることを示唆しています。

米国では、成長とインフレのバランスは依然として管理可能な水準にあり、FRBには一定の余裕があります。ただし、エネルギー価格の高止まりが長引くほど、この安定的な環境は脆弱になります。当社は、インフレ上振れリスクへのヘッジとして米国インフレ連動国債(TIPS)のロングを選好し、米国のイールドカーブのスティープ化を見込むポジションを維持しています。財政状況の弱さ、インフレの不安定性の高まり、財政・金融政策の信認低下が、長期ゾーンのタームプレミアム上昇につながると見ています。

欧州では、インフレの上振れリスクと成長の下振れリスクがともに強まっており、ECBの次の一手は利上げとなる可能性が高いと見ています。英国ではインフレリスクは引き続き高いものの、労働市場の減速が政策判断を複雑にしています。英国債は売られたことで相対的な割安感があるとみていますが、高インフレや財政圧力に加え政治リスクも重なり、マクロ環境には引き続き注意が必要です。日本では日銀が緩やかな正常化を継続し、イールドカーブのフラット化を志向しています。新興国では、エネルギー価格上昇はブラジルなどの輸出国には追い風となる一方、フィリピンなどの輸入国には逆風となっています。

レジットスプレッドは歴史的にタイトな水準にあるため、今後のグローバルクレジット市場は株式市場のボラティリティの影響を強く受けると考えられます。AI関連投資のリターン見通しに対する再評価が起これば、バリュエーションに下押し圧力がかかり、リスクオフの動きを増幅させる可能性があります。当社はクレジット配分を中立やや低めに維持し、変動金利や証券化商品による質の高いキャリーを重視。セクターでは景気敏感よりも金融やディフェンシブ消費を選好しています。

リターンのばらつきが拡大する中、ベータよりも銘柄選択や相対価値がリターンの主因となりつつあります。こうした環境では、グローバルでアクティブな運用アプローチが不可欠です。新たな相対価値機会の獲得に加え、従来型とは異なる分散手段を取り入れることでポートフォリオの耐性強化も図る必要があります。

当社は、新興国の中でも実質金利が低下しつつある市場において選択的にデュレーションリスクを取り、中国国債や人民元資産、コモディティ輸出国の通貨をG10中心のポートフォリオに組み入れることで分散を図っています。また、クレジットについては引き続き適度なオーバーウェイトを維持しています。

今月のチャート:証券化クレジットは年初来で社債をアウトパフォーム

現在の市場環境において、証券化クレジットは、変動金利の特性、担保付きの資本構造、多様な裏付け資産、そして複数層の信用補完といった要素を兼ね備え、特に魅力的な投資機会を提供しています。証券化クレジットは、企業の信用リスクから切り離された、資産プールから生み出されるキャッシュフローへの投資機会を提供します。これらのキャッシュフローはトランシェ(階層)ごとに分割されており、最上位格付けのトランシェは優先的にキャッシュフローと担保を受け取る一方、利回りは最も低くなります。対照的に、最下位格付けのトランシェは高い利回りを提供しますが、資産からのキャッシュフローが想定を下回った場合には損失を被る可能性があります。当社は、グローバルの幅広い証券化商品に投資しており、特に商業用および住宅用モーゲージ担保証券(CMBS、RMBS)やCLO(ローン担保証券)に重点を置いています。投資においては、相対的に高い流動性と強固な信用補完を備え、安定的なインカム創出に寄与する高格付けトランシェを選好しています。証券化クレジットは、しばしば社債に対して魅力的な相対価値を提供します。例えば、AAA格の証券化債は、A格付けの社債と同程度の利回りを提供する場合があります。この利回りの上乗せは、社債と比較した際の構造の複雑さおよび流動性の低さに起因しています。そのため、ポートフォリオ全体の流動性を維持する観点から、証券化クレジットへの配分には一定の上限を設ける傾向があります。

出所:Allianz Global Investors、Bloomberg、2026年5月11日時点。

過去の実績や予測、予想、見込みは将来の実績を示すものではなく、また、将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。

今後の注目ポイント
  • 米中首脳会談
     イラン戦争が当初の想定通りには進んでいないことを受け、米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席が最終的に対話の場に着いた際には、より建設的な会談への意欲が高まる可能性があります。その結果、両首脳は、世界および自国民に対して、世界の二大経済大国間での合意が依然として可能であることを示すことになるとみられます。
  • AI関連の債務ファイナンス
     AIハイパースケーラーは引き続き債券市場を活用し、数十億ドル規模の複数トランシェにわたるインフラ資金調達を進めています。投資適格の金利水準を活かし、データセンター、電化インフラ、計算能力確保に向けた長期資金を固定化しています。一方で、AI関連の債務発行の急増に対する投資家の警戒感にも留意が必要であり、とりわけキャッシュフローの成長や安定性が限定的な発行体では、その懸念が強まりやすい状況です。
  • インフレ指標
    債券市場は金利見通しについてやや慎重な姿勢を強めており、長期金利のボラティリティ上昇や、ブレークイーブンインフレ率(名目金利とインフレ連動債利回りの差)の拡大がそのシグナルとなっています。足元では、インフレ期待がしっかりとアンカーされているとの見方に対する過度な楽観を見直す必要があり、総合インフレが上昇してもコアインフレが必ずしも連動して上昇しない構造的要因にも注意が求められます。

 

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不確実性の高まりを背景に、FRBは政策金利を据え置くと予想します。景気はなお底堅く、中東情勢によるインフレへの波及も現時点では抑制されていることから、FRBは地政学的ショックに時期尚早な対応を取るのではなく、状況を見極める姿勢を選好するとみられます。

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