良いニュースが悪いニュースに?
市場にとって、良いニュースだと思ったら悪いニュースであったり、またその逆であったりと、足元の投資環境は複雑に変動しています。これはつまり、投資家は経済データのみに頼るべきということなのでしょうか。
ここ数週間、一見すると市場にとって悪いと思われるようなニュース、例えば、米国連邦準備制度理事会(FRB)による直近の利上げが、しばしば市場価格の上昇を引き起こしました。その逆のケースもあり、例えば、米国の堅調な労働市場が、相場を調整したりもしました。なぜこのようなことが起こったのか、その問いに答えることは、容易ではありません。現時点で、インフレ対策が最も重要な経済政策目標であることは間違いないでしょう。そのため、株式市場参加者は、金利の引上げや消費信頼感者指数の落ち込みなど、インフレを抑制する可能性のあるものなら、何でも歓迎する傾向にあります。
その一方で、先行指標が明るいと、FRBのタカ派的な金融政策が長引くのではないかという懸念が高まります。これは悪いニュースの一つであり、今後も金利の上昇が続き、しばらくは高止まりするだろうことを示唆しています。実際に、直近の75bpの大幅な利上げを受けて、債券市場の先物はすでに、2023年の金利低下を織り込み始めています。来年の年明けには高金利が景気を悪化させ、景気後退を理由にFRBが利上げの一部の実施を見送るだろうことを想定している模様です。
そんな中、主要な経済の研究機関が年明けの経済鈍化を予想していることから、シクニカルな動きからのインフレ率の低下を期待する声も聞かれます。とりわけ、関心を寄せているのは、最近の中国での出来事です。ゼロコロナ対策の厳しいロックダウン措置によって工業生産が減少し、それによって銅や石油など多くの商品の価格が下落しました。具体的には、銅価格が年初の水準から2割ほど下がり、米国の原油価格は80ドル/バレル、欧州の原油価格は90ドル/バレルを下回る水準に迫っています。今夏にウクライナ戦争でエネルギー価格の高騰が予想されていたことを考えると、これは想定外の展開と言えるでしょう。
同様に、ウクライナは世界有数の小麦輸出国であるにもかかわらず、小麦価格は年初の水準をわずかに上回っているに過ぎません。このことは、現在の価格水準を起点に、来年の消費者物価指数、コモディティ(特に石油関連)の上昇率が低下(前年比)し、それがインフレを押し下げる可能性を示唆しています。構造的な要因とシクニカルな要因が異なる方向に作用しながらも、2023年末にはインフレ率が3.5%に回復する可能性はあるだろうと見ています。
Rising interest rates mean falling stocks and vice versa!

Source: Refinitiv Datastream, AllianzGI Economics & Strategy, 20/09/2022
来週を考える
来週は、ドイツ(ドイツ各州を含む)とユーロ圏の消費者物価指数の発表により、現状がより明確になるでしょう。9月のEU基準消費者物価指数(HICP)は8.8%と予想されており、これは、依然として高過ぎるとみています。ifo消費者信頼感・企業景況感指数からは、インフレと金利上昇に対する消費者心理を、より深く知ることができるでしょう。米国では、8月の個人消費支出が発表され、広く注目されている個人消費支出価格指数(PCE)によって、インフレ動向を詳しく知ることが出来るでしょう。9月の消費者信頼感指数の発表も予定されています。つまり、悪いニュースは市場にとって良いニュースとなり、またその逆もあるということでしょうか。その可能性はあるでしょう。来週に発表される指標は、米国経済が堅調な労働市場と健全な消費支出を背景に、依然として好調であることを改めて強調するものになると見られています。
これは悪いニュースとも言え、強い経済成長がインフレを促進し、さらなる利上げを引き起こす可能性もあります。しかし、10月に第3四半期の決算シーズンが始まれば、投資家の関心は企業の収益に移ってゆくでしょう。そうなれば、例年通り、好決算は再び株価に良い影響を与えるはずです。
トーマス・ティルザ
ディレクター、ポートフォリオ戦略責任者、プライベートクライアント
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