エネルギッシュ

この夏、北半球に押し寄せた様々な熱波のように、再びエネルギー問題が浮上してきています。欧州政府界隈では、先行きの見えないことに対する不安感が高まっていますが、その要因はエネルギー、特に天然ガスの供給に関する不安です。

ロシアによるガス供給の圧力や、どのように安定的にガスを供給するかへの対応は未だに不透明であるなか、EU加盟国は7月末に緊急事態に備えたエネルギー計画をまとめ、8月から供給するガスを温存することで合意しました。EUの典型的な妥協案で合意しようとする圧力の背景には、いくつかの悲観的な経済予測があります。

例えば、ドイツ連邦銀行が発表した2023年のあるリスクシナリオ(ロシアからの天然ガス供給が完全に停止し、その結果、工業生産に大きな支障が出ると想定)では、基本シナリオと比較しドイツのGDPの6%以上が損失されると予測されています。このシナリオは、決定的な経済危機が欧州全体に及ぶことを示唆しています。早い段階でガス使用量を大幅に削減し、新たな供給源からガスを調達することで、少なくともそのような危機を大幅に緩和することを目的としています。このような入り組んだ背景から、ガス価格は非常に高い水準で推移していますが、他の多くの商品価格は近頃下落しており、これは穏やかな経済の見通しと、インフレ圧力がやや緩和される最初の兆候といえます。

それでも、中央銀行は 狂乱的インフ期待を阻止し、持続する高いインフレに対処するため、多大な努力を続けています。そして、欧米の中央銀行の多くは、現在、経済成長よりもインフレを懸念しています。例えば、欧州中央銀行(ECB)は、やや遅れて7月に0.5%の利上げによってマイナス金利を脱し、利上げの流れに乗ることで、利上げサイクルの初期段階である程度の底上げができました。もしこの金利が南欧諸国の国債にも影響をあたえ、正当な水準を超えてしまった場合、通常であれば欧州の関連予算規則に従っていた当該国に、新たな手段をもって介入する可能性は大いにあります。

しかし、今の段階では現実的な検証を行ったときに、この介入の効果の保証については、いくつかの疑問が残ります。そんな中、株式投資家は第2四半期の決算報告を終えました。決算発表シーズンを前にした利益予測の傾向は、文字通り「エネルギッシュ」なものと言えます。これは、ここ数ヶ月、利益予想はほとんどエネルギー部門に支えられており、消費者依存の企業は信頼が失われつつあるためです。先行指標の悪化は、決算期後の利益見通しの下方修正につながる可能性があります。このことは、価格の下落に部分的に反映されると思われますが、すべての原因とはならないでしょう。これは私たちが資本市場に対する慎重なアプローチを続けることを推奨する、大きな理由の一つです。とはいえ、過去のすべての金融危機は同時にチャンスもたらしました。

今週のチャート
Earnings estimates (for fiscal year 2022) for selective MSCI World sectors (February 2022 = 100)
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Past performance and forecasts are not a reliable indicator of future re-sults. Source: Refinitiv Datastream, AllianzGI Economics & Strategy 8/3/2022

戦術的配分, 株式と債券

大西洋の両岸で景気後退の可能性が高まっていることは、今や市場関係者やそれ以外の人々の間でも話題に上っており、今や景気後退に驚く人はいないでしょう。

景気後退からの景気低迷を食い止めるには2つの要素があります。

  1. 回復した消費者 - 消費者の購買力が低下し、楽観的でなくなったという調査結果もありますが、パンデミック時に蓄えた貯蓄を使ったり、非常に好調な労働市場を利用しようという意欲も見られます。
  2. 中国におけるゼロ・コロナ政策に伴う、一時的な力強い成長が見られます。

成長への懸念が高まっているにもかかわらず、中央銀行は今後も金融引き締め政策から脱却しないだろうとみられ、株式市場やハイ・イールド債券などのハイリスク資産に引き続き注意を払うべきでしょう。景気減速は国債や主要国債に有利に働き、金融市場では現在の予想よりも強い金利上昇が見込まれるなか、債券市場の見通しはますます安定的になってきています。

株式

ここ数週間前の株価下落により、株式市場全体のバリュエーションはより緩やかになり、それは米国以外の一部の市場にとって有利になると考えられます。インフレが底堅く、金融政策が限定的であればあるほど、バリュエーションに対する逆風は長引くでしょう。

7月末現在、2022年上半期の収支報告は満足できるものと言えますが、非常に好調であった昨年と比較すると、やや説得力に欠けるでしょう。

株式投資家はセクター別アプローチという観点から、非常に保守的になっており、例えば、循環性のより低いセクターを保有してるようです。しかしながら、シクニカルセクターへのコミットメントを強化することは、現状では時期尚早と言えるでしょう。

優良株に焦点を当てた幅広い分散投資と、価格決定力が強いバランスシートの要素となっています。これには次のようなテーマ別投資、エネルギーや食糧の安全保障、サイバーセキュリティ、特に気候変動活動から恩恵を受けている企業も多いでしょう。

 


皆さんが夏休みにエネルギーをリチャージできますように。

 

ステファン・ロンドルフ
シニア・インベストメント・ストラタジスト・グローバル・エコノミック&ストラテジー

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