市場展望インサイト
2023年の展望:岐路に立つプライベート・マーケット
2023年のプライベート・マーケットにおいては、次の3つの投資テーマが投資家に魅力的な機会をもたらすと弊社は考えています。1. プライベートクレジット、2. 共同投資とGP主導 のセカンダリー取引、3. 資本構造全体にわたるインフラ投資 。
10年にわたって続いた非常に低い実質・名目金利と「取り残されることへの不安」が相まって、投資家は公開市場における評価額を押し上げるとともに、一部のプライベート・マーケットで提供される非流動性プレミアムを積極的に受け入れてきました。
2022年は転換点となった年であり、コストの上昇が世界中の企業に打撃を与え、中央銀行によるインフレ抑制の試みによって世界的なリセッション(景気後退)の可能性が高まりました。
金利とスプレッドの急上昇を受けて2022年に公開市場におけるリターンがマイナスとなった(S&P:-19.4%、グローバル投資適格債:-14.1%)ことを受け、一般に公開市場に遅行して推移するプライベート・マーケットにおいても、プレミアムが減少し、場合によってはゼロになりました。このようなタイムラグ(1~2四半期)は、プライベート・マーケットでは取引実行までに長い時間がかかることとバリュエーションの頻度が低いために生じるものですが、一部の投資マネージャーが過去のリターン目標(資金運用の委託を受けた当時の市況を反映したもの)の下で調達した待機資金を利用して以前の水準で投資を続け、2022年に生じた全般的な資本の再プライシングを無視しようとしたことも一因となったと考えられます。
プライベート・マーケットへの投資は減速し、私たちは岐路に立たされています。この新しい状況下では、価値について合意を形成するのに(より)多くの時間がかかります。しかし、プライベート・マーケットは、高度に多様化したグローバル市場へと発展していることから、一部のサブセクターは複雑なマクロ経済状況下においても、投資家に相対的・絶対的価値をもたらすと弊社は考えています。条件の再設定が進んでいるものの、そのペースはまちまちです。以下に、弊社が注目しているテーマを取り上げますが、これらのテーマを検討するにあたり、単一の「プライベート・マーケット」というものが存在するわけではなく、公開市場の資産クラスの非公開版、あるいは伝統的に銀行のみが資金提供している資産クラスが存在するにすぎないことを念頭に置いておくことが大切です。
- 未公開株。投資家が企業に対して支配力を持ち、価値創造のために直接、企業を変革できる点が、高い流動性と分散効果という公開株のメリットを上回る可能性があります。
- 非公開の確定利付資産(債券や手形)。上場または公開市場で取引されていないものの、ローンというより債券のような性格を持ちます。
- 銀行資産。これらの資産は、公開市場では滅多に見られず、銀行から取得するか、金融仲介機能を持たない銀行から調達することができます。
1. プライベートクレジットと3つの重点分野
- 欧州の中堅銀行の貸出:銀行は、銀行貸出と結び付いた手数料事業を維持しようとする一方で、バランスシートを縮小する方策を模索しているように見受けられます。しかし、金融機関によっては、バランスシートを縮小しつつ手数料事業を維持することは難しいかもしれません。2023年も、欧州クレジット市場では、銀行自身の資本コストの増大と、高金利環境においてリスクの少ないセグメントで利益を上げやすくなっていることを背景に、銀行が特に格付の低い非適格グレード債への貸付からさらに手を引く動きが予想されます。クレジット市場の低格付セグメントにおけるリターンの上昇は、リセッション下で生じる可能性のある損失を吸収する余力の拡大につながります。
- トレードファイナンス:短期の準流動資産クラスで、信用リスクと金利リスクが限定されているため、長期的なクレジット市場のリセットを待つ間、ポートフォリオのリターンを維持する手段として利用できます。これはまた、需給バランスが投資家に有利に働くセクターでもあります。というのも、このセクターに資金を供給しているのは主に銀行であり、銀行は取引関係上の理由と自身にとってのこの資産クラスの長期的な魅力を考えて、短期的なバランスシートへの圧力を抑えつつ、融資を維持することを望むと考えられるからです。そのような戦略はこれまで、変動の激しい市場において安定したパフォーマンスを見せています。ただし、トレードファイナンスのサプライチェーン・ファイナンスの分野で世間の注目を集めるような不祥事が発生したことから分かるように、不正関連の損失を最小限に抑え、問題のある高リスクのカウンターパーティを回避することができるマネージャーの存在が重要となります。
- インフラデット。これについては、インフラエクイティと合わせて後で詳しく取り上げます。
図表1:プライベートクレジットと公開市場のタイムラグのスプレッド

出所: Allianz Global Investors, 2022年9月
2. 共同投資と(GP主導の)セカンダリー取引
弊社は今後の市場について、大混乱を伴う市場のメルトダウンが起こるというより、資金調達と投資家によるポートフォリオ調整が難しくなると見ています。したがってGPが共同投資を通じて投資期間を延長し、軟調な市場で幅広い投資家への販売にのみ頼るのではなく、取引を実行するために大規模な信頼できるパートナーを頼るようになると予想されます。GP主導のセカンダリー取引や継続ファンドでは、そうした信頼できるパートナーが集められることになるため、投資家の皆様 にとって魅力的なエントリーポイントとなるはずです。
セカンダリー取引には、i) 歴史的に見て魅力的なエントリーポイントに加えて、安定した複雑性プレミアムを獲得できるタイミングで迅速に投資できること、ii) 売手にとっての流動性、iii) すべてのステークホルダーに客観的な価格水準をはじめとする多くのメリットがあります。インフラエクイティやインフラクレジットといった、ここ数年最も急成長を遂げているセグメントでは、総取引量に占めるセダンカリー取引の割合は増える一方であり、価値を獲得する余地が大きいと弊社は見ています。
3. インフラ投資-エクイティとクレジット両方
これは魅力的なセクターであり、もっと大きなエクスポージャーを取ることができるという弊社の見解を裏付ける数多くの要因があります。
まず挙げられるのが、エネルギーセクターにおいてエネルギー転換とエネルギー安全保障のために大規模な資本が必要とされていることです。こうした資本ニーズは、以前は数十年単位で検討されていたかもしれませんが、現在では数年単位になっています。第2次世界大戦後、これほどの短期間にこれほど大規模な資本支出が必要とされた状況はなかなか思い浮かびません。
インフラ資産には多くの場合、高インフレの時期を乗り切るのに役立つ特性や契約上の保護が備わっています。今後、インフレによる利幅の縮小と低成長によって圧迫される可能性がある企業への投資からインフラ投資へと、分散化を図るための取引が増えるかもしれません。株式、ハイイールド債、投資適格クレジットなど、この資産クラスに参入する方法は数多くあるため、投資家は、自身に適した資本構成、地域、デュレーションを選ぶことができます。
弊社では、アジアのインフラクレジットが継続的に価値をもたらす可能性があると考えています。この地域は、再生可能エネルギーインフラの成長と構築が続いており、市場が複雑でテーラーメイドのクレジットソリューションが必要となる傾向があります。また、サプライチェーンの再編により東南アジア各地でビジネス機会が生まれています。
インフラセクターには、これまで何度も投資機会の波が訪れていますが、今回の波はその規模という点で特に際立っています。
プライベート・マーケットはこの10年というもの、素晴らしい成長を遂げてきました。2022年の公開市場の混乱とエネルギーセクターにおける資本需要は、プライベート・マーケットの一部のセグメントに有利な条件で参入する新たな機会を投資家にもたらすはずです。不確実性が高まり続ける中、こうした市場に関する経験と理解がこれまで以上に重要となるでしょう。
図表2:名目金利の上昇にかかわらず、
プライベート・マーケットは魅力的な複雑性プレミアムを提供

出所: Allianz Global Investors, Bloomberg, 2022年9月
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